明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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「大泉洋」の笑いは鬱も癒します

 主演するドラマ『ノーサイド・ゲーム』がヒット中の大泉洋(46)。今や押しも押されぬスターですが、ブレークするきっかけとなったのは北海道テレビHTB)の深夜バラエティ『水曜どうでしょう』でした。当時、まだ現役の大学生だった大泉は、同番組で一躍、ローカルタレントから全国区の人気者になったのは周知のとおりです。

 

 

 『水曜どうでしょう』(水どうと略します)はレギュラー放送が終了した”02年からすでに17年も経つのに、いまだに全国どこかの放送局で『水曜どうでしょClassic』としてオンエアされています。そして数年に一度、特番的に復活する文字通りお化け番組で、最近、新作が完成したというニュースが話題になりました。

 

 

 私もこの番組のファンで(ファンのことをどうでしょう藩士と呼ぶ)、TOKYO MXで同番組を視聴しています。

 

 

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今さら『水どう』がどんな番組なのかについてお話することもないと思われるので、ここでは割愛しますが、まだ20代そこそこのもじゃもじゃヘアの大泉が、サイコロを振って出た目により、あらかじめボードに書かれた行き先に強引に連れて行かれる、サイコロの旅シリーズなどは、面白いのなんの。行きたくもない場所へ深夜バスに一晩中揺られて博多やら高知やらに行く羽目になると、ぼやくことぼやくこと。その時の大泉のふてくれたり、ぶう垂れる様子が何とも言いようがないほどに面白く、思わず大爆笑してしまうのです。

 

 

 鬱になると何もやる気が起きずに、気分は沈む一方です。鬱病と診断されて休職せざるを得なくなった時、私もまさしくそんな風になり、何をやっても何を見ても楽しくないという日々が続きました。テレビを見るのも億劫で、好きな番組でさえ見る気になれませんでした。そんな時に、たまたま『水どう』をやっていたのをチラ見していたら、もう何回も再放送を見て内容を知っているはずなのに、いつしかくすくす笑いが漏れ始めて、しまいには大爆笑でした。久しく笑顔さえなかったのに、『水どう』の大泉洋にかかると鬱さえも癒してしまうのです。隣にいた妻も私が腹を抱えて大笑いしている姿にびっくりしていました。それはそうでしょう。鬱の私が爆笑に次ぐ爆笑の渦に巻き込まれている姿を見て、驚かないわけがありません。

 

 

 大泉洋が鬱の陰に隠れてしまった笑いや楽しみといった明るい感情を心の奥底から引きずり出してきてくれたのです。もとより『水どう』のファンでしたが、以来、私はどうでしょう藩士の一員となったことは言うまでもありません。それどころか鬱を笑いで癒してくれた大泉洋のことを恩人のように感じています。有難う、洋ちゃん。

 

 

 現在放映中の『ノーサイド・ゲーム』も、もちろん、毎週楽しみに見ています。『水どう』から十数年が経ち、当時のもじゃもじゃ頭も社会人ラグビーチームのGM(ゼネラル・マネージャー)という役柄に合わせて、企業人らしい普通の髪型にしていますし、池井戸潤の原作の主人公らしく、反骨精神を持つ熱血漢を演じています。当たり前ですが、天然ボケの大泉洋はどこにも見当たりません。シリアスな役柄を熱く演じている大泉もそれはそれで魅力的なのですが、ご本人には申し訳ないが、やはり私のようなどうでしょう藩士からするとどこかで大笑いしたいというのが本音です。

 

 

 『水どう』のお陰で全国区の人気者になった大泉には、次々とNHK大河ドラマ龍馬伝』や民放テレビの連ドラへの主役や準主役などの仕事が舞い込んできたのは当然でしょう。三谷幸喜監督の映画などにも出演していますし、所属するTEAM NACSというユニットで演劇界でも大いに人気を博しています。まさに冒頭にお話ししたように今や押しも押されぬスター俳優にまで上り詰めたことはファンの一人にとっては実に喜ばしいことです。

 

 

 でも、俳優としての評価が高まるにつれ、どうでしょう藩士の中には、大泉の大出世を喜ぶ半面、少し寂しい思いにかられることもあります。正直なところ、私などはいまだにあのもじゃもじゃヘアーの頃の大泉洋が忘れられず、というか毎週どこかの局で放送され続ける『水どうClassic』の彼が懐かしい。あえて言うならば、大俳優の大泉洋よりも『水どう』路線のバラエティタレント・大泉洋こそが本当の姿なのではないかと思えてならないのです。

 

 

 『水どう』の大泉はいつも無邪気にはしゃぎ、口をとがらせて文句を垂れまくり、予想外の展開に慌てふためく。あの”素”のままの大泉洋に比べると、どうしても人気俳優となった今の大泉があまり面白くなく見えてしまうのです。ご本人には申し訳ないのですが、大河にも出演し映画や舞台で演技力を磨き上げてきたとはいえ、今の彼の演技はどこかぎこちなく、ともすれば一本調子に見えてしまうのです。誤解されては困りますが、私は決して今の演技が下手だといっているのではありません。ただ、『水どう』の頃の彼があまりにも生き生きとして、素のままをさらけだしているが故に、あれほどの自然な演技は年齢や経験値が上がっても決して得られるものではないと思うのです。

 

 

 鬱の気分を一気に吹き飛ばしてくれた『水どう』大泉の笑いが秘めるパワーには、計り知れないものがあります。『水どう』は偉大なり。そして鬱を笑い飛ばしてくれる大泉洋は偉大です。でも実に皮肉なことに、それが故に大泉は『水どう』を超えることが難しくなってしまいました。個人的には、俳優よりもバラエティ番組でこそ彼の存在感は一層輝きを増すのではないかと思っています。繰り返しますが、私は大泉洋が大好きですし、ある意味、恩人だと思っているのです。