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「田代まさし」五度目の逮捕で「人間やめますか」を選んだ覚せい剤の恐怖

 元タレント・田代まさしがまた覚せい剤使用と所持容疑で逮捕されました。今回で五度目の逮捕です。つくづく覚せい剤の恐ろしさを再認識しました。覚せい剤撲滅のキャンペーンに「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか?」というコピーがありましたが、田代の場合、明らかに覚せい剤ではなく、人間をやめる方を選択したようです。

 

 

人気スターから転落

 

 

 靴墨みで顔を黒く塗って黒人音楽のドゥーアップ・グループ「シャネルズ」のメンバーとなり、人気を博し、その後グループ名を「ラッツ&スター」に変更して、音楽活動を続けるうちに、志村けんにお笑いのセンスを見出されて、人気タレントとなりました。そんな田代に異変が起きたのは、東横線の駅で女性の下着をスカートの下から盗撮したことが発覚したことでした。この時は罰金刑で済んだものの、会見で「ミニにタコができる」というギャグの映像を制作していたところだったと苦しい言い訳をしたことで、かえってバッシングされることとなりました。確かに、まったく笑えない言い訳ですね。

 

 

 その後は、更生して芸能界に復帰しては、再び覚せい剤で逮捕されるの繰り返しとなったのはご承知のとおりです。薬物との関係を完全に断ち切ったという田代の言葉を信じて、彼が芸能活動を再開するのに手を差し伸べた芸能人仲間や支援者たち。彼らの好意を何度も裏切っても気が済まない男なのです。人の信頼を裏切り続ける、その行為こそが「人間をやめますか?」との問いの答えです。仏の顔も三度までという諺がありますが、五度まではさすがにどれほど寛大な神仏でも決して許さないでしょう。

 

 

 どこか憎めない感じのする男ですが、それは芸風だったのでしょう。彼の本当の素顔を知る人は、誰もいませんでした。おそらくこの男は小心者なのでしょう。意志が気も弱い小心者。だからといって覚せい剤に依存していいという理屈は到底通用しません。それは当人もわかってはいたかもしれません。それでも覚せい剤から逃れることが出来なかったのです。

 

 

”経験者”は語る

 

 

 以前、雑誌の特集記事で、覚せい剤事件で逮捕歴のある歌手に取材したことがあります。名の知れた歌手ですが、ここではあえて名前は伏せることにします。ここでは仮にSさんとします。Sさんは大ヒット曲を連発するほどの人気歌手となったものの、その後、一時期低迷していた頃に覚せい剤を常習するようになり、ついに逮捕され有罪判決を受けました。覚せい剤では二度の逮捕歴の持ち主です。Sさんには、覚せい剤事件を起こした時の心境などについて話を聞きました。

 

 

「僕のように覚せい剤を一度でもやったことのある人間はね、同類を一瞬で見分けることが出来るんですよ。例えば、人通りの多い道を歩いている時、電車に乗っている時に、ふとちょっとしたことで、あの人もやってるな、とわかっちゃうんですよ」

 

「挙動不審というほどではないのですが、ちょっと何というか落ち着きがない、いつも体を小刻みに揺らしている、キョロキョロと目線を常に動かしている、という感じかな。そういうのは一目でわかるのです」

 

覚せい剤というのは、一度でも手を出したらもう絶対にやめられないのです。意志が強い、弱いの問題ではない。ただやめられなくなるんです。僕だって一度逮捕されて服役して、やっと出所できたら、もう二度と覚せい剤には手を出すまいと固く心に誓いましたよ。でもダメでした。もし目の前にあれば、絶対にやっちゃう」

 

「そういう人は一目でわかるといいましたでしょ。だから同類がすぐに寄ってきて、覚せい剤の入手方法を教えてくれるのです。覚せい剤が手に入ることがわかっていたら、ダメだと思っていても、どうしても入手しなければ気が済まなくなる。覚せい剤というのは、それほど恐ろしいものなのです」

 

 

 覚せい剤の誘惑から逃れることは、それほどまでに困難なのだとSさんは語ってくれました。芸能人の中には、覚せい剤事件を何度も起こすケースがあります。それは、Sさんの話のように、類は友を呼ぶの例で、自分では何とか覚せい剤を断ち切ろうとしても、ふとどこかから魔の手が伸びてきて、再び覚せい剤に染まってしまうからなのでしょう。でもいかなる事情があろうとも、絶対に許されることではありません。

 

 

人間をやめざるを得なくなった男

 

 

 以前にテレビ番組で見たことがあるのですが、重度の覚せい剤中毒患者は脳が破壊されて普通の生活を送ることが出来なくなるといいます。幻覚、幻聴、妄想などに苛まれ、精神に異常を来たし、ついには廃人となります。あのコピー「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか?」は真実なのです。

 

 

 今回で五度目の逮捕となった田代まさしは、まさしく、覚せい剤をやめられなくて、人間をやめざるを得なくなった典型なのかもしれません。”更生”して覚せい剤の恐ろしさを伝えるために、NHKの番組にも出演したことがありました。NHK側は田代を番組に出演させたことに対して、反省の弁を述べていましたが、むしろ「人間をやめざるを得なくなった」田代まさしという男を紹介することには、意義があったのではないでしょうか。

 

 

 覚せい剤の恐怖を体現する、田代まさしという”残骸”を見て、私たちはあらためて覚せい剤の恐ろしさを再認識しました。