明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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ようやく大河ドラマ『麒麟がくる』が始まりましたが…う~む?

 重要な役柄を演じるはずだった沢尻エリカが逮捕されたことで、今年のNHK大河ドラマ麒麟がくる』の初回放映が大幅に遅れました。毎年、新年早々にスタートするはずの大河ドラマですが、恐らく大河ドラマの歴史始まって以来の大不祥事に違いありません。ようやく約二週間遅れで、無事、初回放映にこぎ着けました。制作サイドも視聴者も一安心といったところでしょうか。

 

 

カラフルな時代劇

 

 

 さて、初回をご覧になった方はきっと驚かれたことでしょう。前回の不人気だった『いだてん』とは違い、今回は大河ドラマの王道をゆく「戦国モノ」ですが、長谷川博己演じる明智光秀の衣装がやけにカラフルなのです。他の出演者も皆、赤やら水色やら紫などの衣装を身に付けていて、まるで大阪のおばちゃんのようです。往年の大河ドラマファンの方は、衣装係が色の注文を間違えたに違いないと思われたかもしれません。

 

 

 衣装担当にはあの巨匠・黒澤明監督の娘さん、黒澤和子氏です。ご存知のように黒沢映画には、『七人の侍』や『蜘蛛巣城』、『用心棒』などの時代劇映画が多数あります。『影武者』や『夢』のようなカラー作品以前のモノクロ映画では、例えば『七人の侍』などでは、モノクロ特有の薄暗い荒れた空気感がありました。同映画がモノクロではなくカラー作品であったら、どうでしょうか。やはり登場人物たちが水色や赤や紫などの極彩色の衣装を纏っていたでしょうか。古武士らしく擦り切れて色落ちしたような暗い色合いの衣装こそが似合うはずだと思うのですが…。

 

 

 殿様や将軍ならば派手な衣装を纏っても違和感はないかもしれません。でも一介の下級武士が殿様よりも派手な色彩の服を身に付けていたとは考えにくいのです。もっとも今回は、衣装を担当された黒沢和子氏独特の美意識の表れかもしれません。

 

 

 時代考証は専門家に任せるにしても、戦国時代の武将たちは目立ちたがり屋だったというのならば、多少の違和感はあるものの、あれはあれでいいのかもしれません。大河ドラマとはいえ、エンターテイメント作品ですから、見ていて楽しい方がいい。視覚的な効果を狙った演出と考えれば、むしろ面白いと思いました。戦国時代の武士は皆、薄汚れた衣装を着けているという固定観念にとらわれずに、今回の『麒麟がくる』をとくと鑑賞しましょうか。

 

 

 第一話は拡大版でしたが、主演の長谷川博己がのびのびとした演技をしていて、なかなか良かったと思います。時に、現代風な洒落っ気を感じさせるのは、彼の持ち味でしょう。

 

 

明るい画画

 

 

 カラフルな衣装のせいもありますが、画面は明るい感じがします。『龍馬伝』や『平清盛」の時のように、画面が汚いとどこかのお偉いさんにクレームを付けられる心配はなさそうですね。でも、もしも黒澤映画の『七人の侍』の登場人物たちが皆、赤やら紫やらの衣装をつけていたら、映画を観た観客の反応はどうだったでしょうか。う~む、やはりちょっと気になりますね。

 

 

 アカデミー賞に衣装デザイン賞があります。映画は視覚の芸術ですから、登場人物たちの来ている服も非常に重要なのです。カンヌ映画祭で最高賞である、パルム・ドール賞を受賞した、ギリシャの映画監督、テオ・アンゲロプロスの『永遠と一日』に白地に水玉の入ったドレスがとても印象的な場面があります。

 

 

 末期がんに侵された詩人が若い頃の妻と過ごした日々を回想するシーンで、若き妻が着ていた服がそれでした。ところが妻と一緒にいる自分自身は健康を蝕まれて黒っぽいモノクロの衣装を着ているのです。現実は死にゆく詩人の心象風景のように暗いけれども、回想の中の妻はいつまでも若く溌溂としていて美しいのです。その対比を衣装のカラーによって見事に表現したのです。

 

 

 『麒麟がくる』の武士たちのカラフルな衣装は彼らの心象風景などではなく、血気盛んな若武者気質を表現したのでしょうか。それとも、単に「画面が汚い」と言われないように、衣装くらいはカラフルな明るい色調にしたのでしょうか。

 

 

 大河ドラマは一年間を通じて放映される長丁場のドラマです。民放の連ドラは大体11話か12話で完結するのに比べて、けた違いの長さです。だからこそ大河ドラマなのです。ところが、思いもよらぬ出演者の逮捕により、撮り直しを余儀なくされたため、放送開始が遅れてしまいました。当然、通常の大河よりも数話分、短縮せざるを得なくなりました。それが吉と出るか凶と出るかは、これからの内容如何によります。でも今やNHK人気ドラマといえば、大河よりも朝ドラです。朝ドラは半年間の放映ですから、むしろ、大河ドラマの放映期間も短縮した方が視聴者には喜ばれるかもしれません。

 

 

 今回のドラマがヒットすれば、来年からは放映回数を短縮する方針に変わる可能性もあると思います。ゆくゆくは、朝ドラのように大河ドラマも半年で一本になるかもしれませんね。そもそも一年間を一本のドラマでいくのは、『いだてん』のように当たらなかった場合には、痛手が大きい。半年ならば、前半のドラマがイマイチの人気で終わっても、後半のドラマで挽回することも可能になります。今回の短縮版の大河ドラマが、今後の大河ドラマの在り方を変えるきっかけになるかもしれません。