明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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「宣言解除」でも私たちの日常は失われてしまった!

 安倍総理は「緊急事態宣言」を全面解除することを高らかに表明しました。会見で総理は、外出自粛などで不自由な思いをしていた国民と営業自粛要請に協力した全企業に対して感謝の意を表するとともに、新型ウィルスの最前線で戦ってきた医師、看護師などの医療関係者に対しては、敬意の言葉を述べました。そして、第二次補正予算を組んで、世界でも例を見ない”最大規模”の経済対策を講ずると、胸を張りました。

 

 

 さらには、他国のような罰則規定を伴わない、日本型の施策が短期間のうちに感染の収束に成功したことを”自画自賛”したのです。とはいえ、細かく地域の感染状況をみると、神奈川県や北海道ではまだ基準値をクリアしていません。それでも全面解除に踏み切ったのは、感染状況と併せて医療体制の現状も考慮した上で、総合的に判断したとのことです。

 

 

 しかし基準値に達していない北海道の住民にインタビューしたところ、まだ解除は時期尚早ではないかと不安視する声も上がっています。実際、観光地ではない、街の商店街や海辺や川べりなどでは、解除前から結構な人混みが出来、密集、密接となっている状況もあります。川釣りを楽しむ人々や潮干狩りを楽しむ家族連れで溢れる場所では、いつまた感染クラスターが発生するかもしれません。

 

 

薄氷を踏む「宣言解除」

 

 

 安倍総理は早く社会経済活動を再開させたい一心でしょうが、今回の宣言解除はまさに薄氷を踏むようなものと言わざるを得ません。多くの専門家が指摘しているように、新型コロナウィルスの厄介な点は、一度収束したかに見えても、再び感染拡大の「第二波」がやってくることです。その点について、総理も今後も3週間程度の期間をおいて全国の感染状況を注視していき、もしも第二波が到来する兆しが見えだしたら、二度目の緊急事態宣言を発令することもあり得ると釘を刺しました。決して油断は出来ないと言うのです。

 

 

 全面的に宣言解除しても、むしろ私たちはこれまで以上に感染予防には慎重を期する必要があります。政府が提案する「新しい生活様式」を続けなければならないのです。もう耳にタコが出来ましたが、感染のリスクが高い「三密」を避けて、ソーシャル・ディスタンスをキープすることが求められます。

 

 

 専門家の中には、新型コロナウィルスは地球上から完全に消滅させることは不可能であり、これからもずっとこのウィルスに怯えながら暮らしていかねばならないという意見もあります。インフルエンザのように突然変異していくつかの型を持ち、決して流行は終息することはないとのこと。「新型コロナ」と共存していくよりほかなさそうです。

 

 

 さて、どのようにこの厄介なウィルスと”共生”していけばよいのでしょうか。「新しい生活様式」を基本とした日常生活を送ることが大前提です。外気を胸いっぱいに吸い込むなどというのは厳禁です。必ず外出時にはマスクを着用しなければなりません。マスクというフィルターを通してしか、外気に当たることは許されないのです。

 

 

 マスク着用が半ば義務付けられたようなものですから、ファッション界もモデルに最新モードを着せるのと同時に「おしゃれなマスク」が必須アイテムとなることでしょう。女性誌やファッション雑誌の表紙を飾るモデルはマスク美人が登場。これからの時代はマスクの似合うモデルがもてはやされそうです。マスクを付けて、著名人にそっくりのメイクを施して一世を風靡したざわちんのことを思い出しました。

 

 

失われる「日常」

 

 

 宣言解除により、これまで営業を自粛していた外食産業などが営業再開に動き出しました。店を開けるにあたっては、入り口に消毒用アルコールを設置し、体温計で額の温度を測定する。4人掛けテーブルならば対面した相手の唾液の飛沫が掛からないように、アクリル板の仕切りを設置する。なるべく対面に座らず、横並びになる。

 密集、密接にならないように席と席の間隔を十分に開ける。大人数のグループ客は4名ずつに分かれて席に着き、リモートワークでお馴染みのタブレットなどの画面を見ながら乾杯の音頭を取る。

 

 

 映画館や劇場では、ソーシャル・ディスタンスを確保するために、定員の半分ほどで満席とする。映画館の暗闇に紛れて、恋人と密着するなどといったことはもってのほかです。

 バーのカウンターを陣取って、バーテンダー氏と大人の会話を楽しむのも控えなければなりません。それどころか、カウンター越しの会話もアクリル板を挟むこと。まるで拘置所の面会のようですね。

 

 

 外出自粛の際には、仲間同士で居酒屋で飲み会も出来なかったので、パソコン画面を介しての「オンライン飲み会」が流行りました。各自が自宅でつまみや酒を用意して、パソコンでお互いにおしゃべりするというものです。物珍しさもあって、結構、参加者は多かったようですが、あんなのはすぐに飽きてしまいます。やはり、仲間が居酒屋やレストランなどに集合して、ワイワイとやるから楽しいのです。オンライン飲み会よりもその方がずっと盛り上がるに決まっています。

 

 

 夜の街に繰り出す楽しみも、これでは半減どころか、まるで楽しくないでしょう。カラオケを歌う時は、人から2メートル以上離れること。これはまるでステージ上で朗々と歌うオペラ歌手のようです。やっぱりカラオケは皆でワーワー歌いまくるから盛り上がるのです。

 

 

 アクリル板越しの会話、人もまばらな劇場、横並びのテーブルでの食事、等々。宣言解除の後、私たちがこれまで当たり前に過ごしてきた日常は、すっかり失われてしまったのです。プルーストの『失われた時を求めて』が読みたくなりました。

 

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