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朝ドラ『エール』に思わず落涙しました!

 NHKの朝ドラ『エール』に思わず落涙しました。

 29日OAの回。音が通う音楽学校では、記念行事で披露されるオペラの主役を決める最終審査が行われ、音が見事に主役の座を射止めました。課題曲は『椿姫」。一次選考では、「楽しみながら歌った」と語った音でしたが、審査員からは「あなたの歌からは何も伝わってこない」と酷評されました。

 

 

歌に込められた「思い」

 

 

 男女の愛の機微を勉強しようと、カフェーの女給になった音ですが、そこで知り合った希穂子と音の夫・裕一の幼馴染の鉄男が偶然、再開。二人はかつて結婚を考えていましたが、鉄男が務める新聞社の社長令嬢との縁談が持ち上がったため、希穂子が自ら身を引き、ひとり上京、その店の女給をしていたのです。結局、音の説得にも首を縦に振らずに、裕一の初レコーディングを祝うパーティで希穂子は、あらためて結婚を申し込む鉄男に、自分にはすでに婚約者がいると偽り、別れを告げるのでした。

 

 

 音は二人の複雑な心情に間近で接したことで、運命に翻弄される男女の心の機微を学び、最終選考で『椿姫』を切々と歌い上げることが出来たのです。結果はもちろん、音の圧勝でした。

 

 

 希穂子は鉄男の将来を思うが故に、偽りの言葉を弄してでも決然と身を引く、このクラマックスで、『椿姫』のヴィオレッタと同じ気持ちで、叶わぬ恋の悲しみを情感豊かに歌い上げた、選考会での音の歌唱がバックに流れるところは、見事な演出でした。この場面では、すでに選考会は終わったことなのに、あえて時間を遡り、その歌を別れのシーンに被せたのです。一見、別ものであるはずの音楽とシーンが実に巧みにリンクし、視聴者から涙を搾り取ることに成功したのです。

 

 

 『エール』からますます目が離せなくなりました。今後の展開が楽しみです。ところが、誠に残念ながら、「コロナ禍」の影響により新たに撮影することが困難になったため、来月中ごろまでで一旦、放送は中断せざるを得なくなりました。こんなところにも、「コロナ」の影響が及んでいるのです。当面は、初回からあらためて再放送することになりました。見逃した方にとっては、却って良かったかもしれませんね。感染が収束してからの放送再開に期待しましょう。

 

 

音楽と映像の妙で

 

 

 悲哀物語は古今東西を通じて、人気があります。シェークスピアの『ロミオとジュリエット』はその代表でしょう。同作を現代に舞台を移したのが、映画『ウェスト・サイド物語』です。ブロードウェイミュージカルを映画化した作品ですが、音楽担当はかの大指揮者・レナード・バーンスタインです。劇中歌の『トゥナイト』や『マリア』など、なかなか格調高い曲です。さすがは、バーンスタイン

 

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 バースタインからの連想ですが、グスタフ・マーラーを最も深く理解していたのも、同氏でした。バーンスタイン指揮のマーラーは、思い入れたっぷりのエモーショナルな演奏です。生前、マーラーは、作曲家としてよりも指揮者として名声を得ていました。指揮者としてのマーラーの直弟子にあたるのが、かのオットー・クレンペラーです。が、クレンペラーはかなり偏屈な人物だったようで、マーラーの10ある交響曲(第十番は未完)すべてを演奏することはありませんでした。

 

 

 映画『ベニスに死す』(ルキノ・ヴィスコンティ監督)のラストで、老作曲家が密かに思いを寄せる美少年の若く生き生きとした姿を眺めながら、ビーチチェアで静かに息を引き取る場面で流れるのが、マーラー交響曲第5番の第4楽章『アダージェ』です。この映画の1シーンが特に印象的なので、マーラーの音楽がより一般的に聴かれるようになったとも言われています。

 

 

 ところが、クレンペラーはこのアダージェが大嫌いで、「サロン音楽だ」と酷評して、演奏することはありませんでした。サロン音楽のどこが悪いのか、と言いたくなります。ならば、エリック・サティだって「サロン音楽」の一種とみることが出来ますし、モーツァルトも貴族のサロンで演奏されていたわけですから、こちらもサロン音楽と言えます。

 

 

 クレンペラーという大指揮者は、非常な変わり者でしばしば奇矯な振る舞いをすることがあったそうです。5番の「アダージェ」は美しいことこの上なく、切なくやるせない旋律がいつまでも耳に残ります。そのあたりが変人には我慢できなかったのかもしれません。

 

 

 毎年、元旦に開催されるウィーンフィルハーモニー管弦楽団の演奏会では、ヨハン・シュトラウス2世を中心としたワルツばかりを集めたプログラムで知られています。元旦のマチネでワルツを聴くというのは、なかなか洒落ていますね。『美しき青きドナウ』などもよく演奏されますが、この曲を映画に使用したのが、『2001年宇宙の旅』です。監督はスタンリー・キューブリックSF映画の金字塔と称される作品ですが、近未来の宇宙時代を描いた内容に、クラシック音楽を大胆に使用したところが、なかなか斬新でした。

 

 

 冒頭で流れるのは、交響詩ツァラトゥストラはかく語りき』(リヒャルト・シュトラウス作曲)。『美しき青きドナウ』はマザーシップに宇宙船がドッキングするシーンで使われています。ゆっくりとした動きの宇宙船とワルツのメロディが実にマッチしていて、感動します。

 

 

 朝ドラに話を戻しましょう。結ばれぬ運命の男女の悲恋と『椿姫』の取り合わせが絶妙でした。あらためて映像と音楽とのマッチングの妙に胸が熱くなりました。皆さんは『椿姫』の歌と別れの映像のどちらで泣きましたか?