明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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『チコちゃんに叱られる』の癒し効果がスゴイという話

 NHKのクイズバラエティ番組『チコちゃんに叱られる』が大人気です。あまりの人気ぶりにチコちゃんグッズが売り出されるほどです。チコちゃんのイラスト入りトートバッグやTシャツ、キーホルダーやペンケース等々。大人から子供までチコちゃんに叱られたくてうずうずしているのです。うつの方にとっても、チコちゃんはアイドルに違いありません。普通、うつの症状がある時には、何ごとにもすぐ落ち込みがちですが、チコちゃんならばOKです。チコちゃんにあの決めセリフ「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言われたら、きっとうつ気分も吹き飛んでしまうことでしょう。何でも知っている、永遠の5歳のチコちゃんには、うつの方々も大いに癒されます。チコちゃんには底知れないパワーがあるようです。

 

 

チコちゃんの罵声

 

 

 チコちゃんの声を担当するのは、お笑い芸人の木村祐一です。彼のブラックユーモアたっぷりのトークや出演者をいじり倒すやり口も実に面白いですね。一応、永遠の5歳の音声に変えているものの、おしゃべりの内容だけ聞くと、まさしく歯に衣着せぬ大阪芸人のそれです。それが少しも嫌味にならないのが不思議なところです。もしも、チコちゃんの声色ではなく、キム兄の声のままだったら、かなり嫌味な感じになるでしょう。そのあたりの塩梅が、脚本と演出の妙といえそうです。

 

 

 番組にはもう一人、キョエちゃんというカラスが登場します。キョエちゃん人気もまたチコちゃんに次ぐものです。キョエちゃんはいつも不機嫌そうにしていて、ホスト役のナイティナインの岡村隆史に毒づいてばかりいます。「岡村のバカー!」がキョエちゃんの鳴き声なのですから、いやはや何ともスゴイものです。キョエちゃんが歌う曲まであり、今年の紅白にはチコちゃんと一緒にキョエちゃんも登場して、歌を披露するかもしれません。案外、今年の紅白の目玉がチコちゃんとキョエちゃんの特別出演という可能性もありそうです。

 

 

チコちゃん人気の秘密

 

 

 チコちゃんは、なぜここまで老若男女まで幅広く受けるのでしょうか。キム兄の軽妙かつブラックジョークがあるからか。キョエちゃんのバカ~!が面白いのか。でもキム兄トークのテクニックがいかに優れていたとしても、それだけではこれほどの人気番組にはならなかったと思います。昭和を感じさせる、チコちゃんの刈り上げヘアーが面白いから。それだけではなさそうです。時代が平成から令和に変わっても、永遠の5歳の幼稚園児は文字通りそのままの姿で変わりません。レトロという言葉だけでは言い尽くせない、何かがあの永遠の5歳のチコちゃんにはあるように思えてならないのです。

 

 

 チコちゃんは永遠の5歳のくせに、キム兄そのままの毒のある物言いをします。そんな5歳児が世の中にいるはずがありません。チコちゃんは特別な存在なのです。まずそこに視聴者を魅了する秘密があるようです。人間だれしも、望むと望まざるとにかかわらず、年を取っていきます。それは避けられないこと。誰でもチコちゃんと同じ5歳の時がありました。でも5歳の幼稚園児はやがて小学校に上がり、中学、高校、そして大学へと進学して、社会人になっていきます。その間には、反抗期もあれば、恋愛もすることでしょう。結婚して家庭を持ち、子供が生まれるかもしれません。でもチコちゃんは違います。番組内で何度も発言しているように、永遠の5歳のままです。そこに視聴者は一種の郷愁と憧れを持つのではないでしょうか。

 

 

 昭和レトロというのがやたらと流行りましたが、チコちゃんの髪型や服装はまさしく昭和の幼稚園児のそれです。『ちびまる子ちゃん』も昭和レトロの味わいが何とも懐かしくて、まる子ちゃんが年齢よりも大人びた感覚で話すところも面白い。チコちゃん人気との共通するところがあると思います。ちびまる子ちゃんをさらにブラックジョークを利かせてパワーアップさせたのが、チコちゃんなのです。

 

 

ストレス発散にも

 

 

 チコちゃんがブチギレて「ボーっと生きてんじゃねえよー!」という強烈な罵声を大人の出演者に向かって浴びせかけるところが、スカッとしませんか。分別のある大人は面と向かって相手にあんな罵声を浴びせかけることなどなかなかできませんよね。本当にやったらただじゃすまなくなりますから、皆さん、絶対にチコちゃんの真似をしたらいけませんよ。あの決め台詞は永遠の5歳であるチコちゃんだから許されるのです。

 

 

 あれだけの罵声を浴びせかけられたら、恐らくは激怒されるに違いありません。永遠の5歳児だからこそいえるわけです。とはいえ、チコちゃんの本物の声はあのキム兄なわけです。嫌味たっぷりのキム兄のブラックジョークをチコちゃんを通して、歴とした大人に対して正面からぶつけるところが、痛快ではないですか。会社の嫌な上司にむかってあんな罵声を浴びせられたらどんなに気持ちいいだろうなあと思いながら、あの番組を見ている人も多いことでしょう。つまりチコちゃんのあの強烈な罵声は、視聴者にとってもストレス発散になるというわけです。

 

 

 あの番組の主役はもちろん、チコちゃんです。キョエちゃんは準主役ですね。では他の出演者はどうでしょうか。ナインティナイン岡村隆史はあくまでもホスト役です。演出上そうなっているかどうかはわかりませんが、岡村はお笑い芸人なのにちっとも面白くないのです。キョエの方が全然面白い。売れっ子のタレントさんが出演しているのに、全然面白くありません。完全にチコちゃんに”食われて”しまっています。

 

 

お笑いタレント不要論

 

 

 『チコちゃんに叱られる』の大成功を見た民放局は、きっとそのうちに似たようなキャラクターを使ったバラエティ番組を制作してくることでしょう。NHKの一人勝ちでは民放テレビ局は面白かろうはずがありません。『チコちゃん』的なキャラクターが他の局でも人気になると、お笑いタレントや人気タレントを起用する必然性がなくなるかもしれません。チコちゃんのような被り物と声の吹き替えだけでいいわけですからね。そうなると、バラエティ番組でよく見かけるひな壇に並んでいるタレントたちは、お払い箱にされてしまうかもしれない。老若男女に好かれるチコちゃんですが、タレントたちにとっては手ごわいライバルになり得るのです。タレントたちも努力しないと、チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねえよー!」と叱られちゃいますよ。