明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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「下剋上」大相撲を観戦された両陛下と愛子様のご心中は?

 昨年は日本中が湧きたったラグビーW杯がありましたが、前回の時に大活躍した五郎丸歩選手含む日本代表が世界の強豪チームを相手に大善戦したことも記憶に新しいところです。そして、日本の国技たる大相撲の初場所で、今度は、西十七枚目の徳勝龍が千秋楽で幕尻優勝を賭けて戦います。この取り組みは見逃せません。昨年のラグビーに続いて、今場所の大相撲はいろいろな意味で熱くなりそうです。

 

 

 今場所はご承知のように白鳳に続き鶴竜も休場し、横綱不在となりました。その穴を埋めて余りあるのが、平幕力士の活躍です。関取の中で最小兵の炎鵬が八日目に遠藤と対決した際には、身長も体重もはるかに上回る遠藤を勢いよく土俵下へ叩き出し勝ち星をあげた相撲はなかなか見応えがありました。遠藤は横綱・白鳳を切り返しで押し倒して金星を上げ、白鳳は休場に追い込まれたのです。その遠藤を土俵いっぱいに動き回り翻弄した挙句に、押し出すとは大したものです。

 

 

天覧相撲で起きた「下剋上

 

 

 明日に千秋楽を控えた十四日目、天皇・皇后両陛下と愛子内親王をお迎えしての天覧相撲となりました。愛子様は大の相撲ファンでいらっしゃるそうです。きっとこの日のご観戦を楽しみにされていたことでしょう。着物姿の雅子様はとても美しく輝いて見えました。天皇ご一家、お揃いでの相撲観戦となりましたが、横綱不在の場所故に横綱の土俵入りはもちろんありません。愛子様としては少々ご不満に思われたかもしれませんね。

 

 

 ところが、天覧相撲のこの日、相撲の歴史に残るであろう取り組みが実現したのです。前頭17枚目の徳勝龍が前頭4枚目・正代を突き落としで破り、優勝に王手をかけたのです。勝ち名乗りをあげた徳勝龍の表情には、土俵上の激しい対戦後にもかかわらず、燃えるような闘志が浮かんでいました。千秋楽に勝利すれば、文句なく幕尻優勝ということになります。徳勝龍は西の17枚目という最下位にもかかわらず、何と堂々たる威厳が備わっていることでしょう。

 

 

 幕尻優勝は実に20年ぶりといいますから、非常に稀なことです。でもそれ以上に、相撲ファンならずとも熱くなるのは、「下剋上」を目の当たりにしたからに他なりません。幕尻力士が優勝に王手をかけるとは、まるで「アメリカンドリーム」のようではありませんか。いや、「ジャパニーズドリーム」と言い直しましょう。先のラグビー日本代表の健闘ぶりも上位チームが相手だったのですから、「下剋上」に違いありません。ラグビーも今回の大相撲も、今の日本は下剋上というジャパニーズドリームに燃えているのです。

 

 

 14日の天覧相撲で「下剋上」の最前線を目の当たりにされた、天皇・皇后両陛下、そして愛子様はどのような思いを抱かれたのでしょうか。ラグビーにしても相撲にしても、その健闘ぶりに国民の心が熱くなれるのはいいことだとお考えになられたのでしょうか。それとも、戦国時代のように、群雄割拠する武士=国民が自らの実力でのし上がっていく様に、当時の皇室が抱いたであろう、ある種の「危惧の念」がちらりと脳裏を横切られたのでしょうか。

 

 

 安倍政権下では、積年の課題に果敢に取り組んでいますが、その中には皇室典範の改正があります。この問題は複雑な事情が絡んでいますが、平たく言えば、女帝を容認するか否か、です。秋篠宮様皇位継承の第二位ですが、ご長男の悠仁様もご誕生になり、今後、皇統は長男ご一家から次男へと移ることになります。でももしも、皇室典範の改正により、女帝が認められれば、愛子様が将来の天皇にご即位されることも可能になります。国民の意向も鑑みて今後、この問題についてますます議論が深まることでしょう。

 

 

 英国ではウィリアム王子が王室離脱を宣言するというビッグニュースが、世界中を駆け巡りました。ヨーロッパ屈指の伝統ある王室で起きた「王室離脱」は”大事件”に違いありません。たとえ王室のご子息でもご自分の意志で離脱することが出来るというのは、非常に革命的なことだと思います。翻り、日本の皇室の現状はどうでしょうか。

 

 

 第二次大戦で敗戦国となった後に、昭和天皇はこれまで神格化されていた地位を否定して、「人間宣言」をされました。戦後の日本はそこから始まったと言っても過言ではありません。しかし、その後の皇室の在り方は、相変わらず厚いベールに包まれたままです。閉鎖的な体質は現在も変わりありません。「開かれた皇室」という言葉がもはや死語になりつつあるかのようです。

 

 

 平成の天皇・皇后両陛下がご退位されて、令和という新時代になりました。上皇陛下がお望みになられて、ご退位され、今の天皇・皇后両陛下がご即位されたのです。皇室が自らのご意思を通される時代になったとも言えます。英国王室の離脱事件”も同様でしょう。令和の時代には、日本はかつての慣例、通念が通用しない時代になるかもしれません。ひと言でいえば、何が起きても不思議はないということです。過去の常識はもはや非常識となりつつあります。

 

 

 伝統ある大相撲は、横綱を筆頭に序列の明確な階級社会でもあります。ところが、昨今の相撲を見ていると、横綱の権威は以前よりも明らかに弱まっているように思えてなりません。現に品位を求められる横綱が自分勝手に振る舞い、廃業した例も記憶に新しいところです。第一、横綱横綱らしく圧倒的な力量を発揮できていません。金星は毎場所生まれますし、今場所のように横綱が不在ということもめずらしくなくなりました。代わって、平幕力士が優勝するようになったのです。今回の初場所では、さらに西の最下位である14枚目の徳勝龍が大健闘して、優勝に向けて大きく前進したのです。この大逆転を「下剋上」といわずして何と言いましょうか。

 

 

 貴賓席にてご観戦された両陛下と愛子様は、令和という時代を象徴するような相撲を、「下剋上」の現場をご覧になられたのです。世は戦国の乱世、下剋上にていつ身分低き者が上位と取って代わるやも知れぬ。令和が今回の相撲のように「下剋上」の世になるかもしれないという、微かな予感を抱かれたかもしれません。