明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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「終戦記念日」には『となりのトトロ』より『火垂るの墓」を!

 「コロナ禍」の特別な夏となった今年の終戦記念日。8月15日には、原爆の日とともにすべての国民が祈りを捧げる日です。

 東京の武道館で開催された「全国戦没者追悼式」では、感染防止の観点から、昨年の参列者数の一割ほどの300人未満に制限されました。入館前には検温が行われ、マスク着用のままのため、国家も斉唱せず演奏のみという異例な式典でした。

 

 

 天皇陛下はお言葉の中で、初めて「コロナ感染症」に触れられました。

 

 

 「私たちは今、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、新たな苦難に直面していますが、私たち皆が手を共に携えて、この困難な状況を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います」

 

 

 戦後最悪の事態と言われる現在の「コロナ禍」について言及され、「多くの苦難に満ちた国民の歩み」を伴った戦後75年間に続く、これからの「アフターコロナ」の時代にもご心痛のご様子でした。

 

 

「コロナ時代」の幕開け

 

 

 終戦記念日の式典で国家斉唱すら叶わない「コロナ禍」。国家間で勃発する戦争よりも、底知れぬ恐ろしさがあります。ウィルスという極小の病原菌は国家や人種間の争いをも凌駕するほどの「破壊力」があるのです。そこには、大義も何もありません。これまで安穏と暮らしていた日常が、突如として悪夢と化してしまう…。それが「コロナ時代」なのです。

 

 

 政府が提唱する「新しい生活様式」は、私たちのごくありふれた日常をも一変させる内容です。ソーシャル・ディスタンスを取ること、密集、密閉、密接の三密を避けること。これを遵守するためには、たっと一人きりで、誰とも密接にかかわり合わないようにするほかありません。まるで、無人島に漂着した遭難者か宇宙空間を遊泳するアストロノーツのようです。

 

 

 「コロナ禍」以降、私たちはこのような”孤絶”した社会で生活を送るしかありません。他人とコミュニケーションを取る手段は、オンラインによる対話のみです。オンラインで知り合った男女が恋に落ち、結婚したとして、その先はどうなるのでしょうか。セックスもオンライン化していくのでしょうか。

 

 

 これは決してジョークではありません。真面目な話。ただでさえ毎年、出生率が低下していく日本は、さらに深刻な人口減に陥ることでしょう。陛下がそこまでご心配なさったかどうかは、知る由もありませんが、戦後75年目の今年、日本は、いや世界は、滅亡への道を一歩また一歩、その歩みを速めているように思えてなりません。

 

 

 「コロナ時代」にあって、これからの歴史はディストピアしかないとしても、8月のお盆休みには、せめていっときの「楽しい夢」を見たいと思わずにはいられません。

 終戦記念日の前日の14日、夏休み恒例のスタジオジブリ制作の名作アニメ『となりのトトロ』が日テレ系列局で放映されました。誰もが童心に返ったような、懐かしい気持ちに浸れる素晴らしい作品です。もう何回、観たことでしょうか。それでも必ず放映されると観ないではいられません。

 

 

 片田舎に越してきた小学生と幼い女の子が、お化けが出るという古民家で暮らし始めて、トトロという、ネコのような狸のような不思議な”お化け”に遭遇します。いや、もう内容については、先刻ご承知でしたね。トトロやねこバスなどの不思議な存在を見ることが出来るのは、純真無垢な子供だけです。

 

 

 ある日、突然に降り出した雨の中。傘を持たない二人が地蔵堂で雨宿りしていると、通りかかった隣に住む男の子が自分の傘を差しだします。

 雨降りの中、バス停で父親の帰りを待つ二人の隣に、あのトトロが。そして、お父さんのために用意してきた傘をトトロに渡すのです。

 

 

 傘を受け取ったトトロは、今度は入院中の母親を見舞おうとして行方がわからなくなった幼子を探すために、ねこバスを提供します。傘のお返しなのでしょう。映画で描かれる傘には、ただ雨を凌ぐためだけではない、人への思いやりや優しさなどといった意味合いが含まれているように思われます。

 困っている人、不安に駆られている人、等々。そういう人々に「傘」を差しだすことで、「思い」まで伝わるのではないか。「コロナ禍」に、あなたのこころの「傘」を差しだそうではありませんか。それが「絆」になって伝播していくのではないでしょうか。

 

 

終戦の日に観るべき映画は

 

 

 『トトロ』で温かい気持ちになった翌日、終戦記念日に観るべき映画は。同じジブリ作品の『火垂るの墓』は如何でしょうか。実は、同映画は『となりのトトロ』が映画館で封切された際に、同時に上映された作品なのです。

 

 

 原作は「焼跡世代」の作家、野坂昭如の同名小説です。小説は独特の文体で描かれる、敗戦直後に短く悲惨な生涯を閉じた二人の子供の物語です。戦場ではなく、都会の中で、誰からも救いの手を差し伸べられないままに、生きる術を持たない子供が飢えと孤独のうちに亡くなっていく…。脆く、儚い命が無情にも失われていく姿に、涙を抑えることが出来ません。

 

 

 「コロナ」後の未来には、一人でも尊い命が奪われないよう、皆でこころの「傘」を差しだそうではありませんか。そうすれば、大人の私たちにも、トトロの姿を見ることが出来るかもしれません。