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「第3波」到来で問われる「Go Toキャンペーン」の是非

 「コロナ禍」で落ち込んだ日本経済の再建のために、鳴り物入りでスタートした「Go Toキャンペーン」でしたが、再び「新型コロナ」の新規感染者数が急増する中、あらためて同キャンペーンの是非が問われています。

 

 

 新型コロナの1日の感染者数が13日には初めて1700人を超えました。東京都の14日の新規患者数は352人で4日連続して300人を大台を突破し、大阪、北海道でもここ数日間で過去最高の患者数を記録したのです。

 

 

 こうした感染状況について日本医師会中川俊男会長は11日、「第三波と考えてよいのではないか」との見解を述べました。厚労省の発表する「新型コロナ陽性者数」を示すグラフの急勾配を見れば、まさに一目瞭然、素人目にも今が感染の「第3波」の真っ只中にあることは理解できます。

 

 

「第3波」か否か

 

 

 しかし政府の見解は違うようです。新型コロナ対策の分科会で西村康稔経済再生担当相は、専門家から「第3波」ではないかとの指摘があったことに関して会見で次のように語りました。

「4月5月の大きな流行と、7月8月の大きな流行、夏の流行に匹敵する大きな流行が来つつある、その強い危機感は持っているということですので、これを第何波という定義づけは政府としては行っていない」

 つまり、大きな流行期が来つつあるとの認識はもちつつも、あえて「第3波」との呼び名を付けたくないというのです。これこそが政治家のお家芸とも呼ぶべき”まやかし”発言ではないでしょうか。

 

 

 菅総理は緊急事態宣言や「Go Toキャンペーン」の見直しについては、「現時点では専門家もそうした段階ではないとの認識を示している」と述べ、この”切り札”政策の見直しについては、否定的です。

 それもそのはず、そもそも同キャンペーンは安倍内閣時代に始まったもので、当時、官房長官だった菅氏自身が旗振り役を担いました。当初は感染状況を鑑みて東京都を「トラベル」の対象から外しましたが、その後対象に加わり、「コロナ禍」で打撃を受けた旅行産業に大きな成果がもたらされたことは周知の通りです。

 続く「イート」や「商店街」もかなりの経済効果が見込めます。ようやく社会経済活動が始まったその矢先に、感染拡大の「第3波」到来を政府は認めたくないのです。あまりにも間が悪すぎるからです。

 

 

 間が悪いのはそれだけではありません。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が、開会式まで8か月を切った開催国の現状を視察するために15日に来日します。現時点で開催国・日本が米国や欧州諸国のように「第3波」に飲み込まれていたとあっては、さしものバッハ会長も来年の東京五輪の開催を不安視するに違いありません。もしも政府が「第3波」と認めた上、さらに「Go Toキャンペーン」を中止せざるを得なくなったとしたら、尚更のことです。

 

 

 いかに日本政府が頑なに「第3波」ではないと否定したところで、バッハ会長は今の感染状況を見て見ぬふりをするはずもありません。外交に関してはまだ”初心者マーク”がついたままの菅総理が「不安」などおくびにも出さずに、百戦錬磨のバッハIOC会長を前にして、必ずや来年の五輪開催を実現させると大見栄を切ることが出来るでしょうか。

 

 

「最後のチャンス」

 

 

 政府の感染対策分科会の尾身会長は12日、会合終了後の会見で、西村大臣の「さらに感染が拡大すれば特措法に基づき休業要請などが必要となる」との発言を受けて、政府の指針である「ステージ3」に当たると判断すれば、「Go Toキャンペーン」は当然停止すべきと政府に提案すると語り、「今が(これ以上の感染拡大を食い止める)最後のチャンスだ」と訴えたのです。

 

 

 「COVID-19」は収束するどころか、さらに世界的規模で感染が急拡大しています。本格的な冬を迎える日本でも、感染状況は悪化の一途を辿りつつあります。

 そうした中にあって、果たして来年の7月23日、東京五輪の開催日を無事に迎えることが出来るのでしょうか。もし大会を中止となった場合には、ただでさえ厳しい日本の財政事情にさらに追い打ちをかけられることになります。

 専門家によりその数字には開きがありますが、少なく見積もっても4兆5000億円、最大で29兆7000億円もの経済損失が発生するとの試算もあるのです。

 

 

 帝国データバンクによると、13日現在の新型コロナウィルス関連倒産件数の累計は700件に達しました。「コロナ禍」で大幅に減収となった業種や個人事業主を救済するために政府は巨額の補正予算を組み、補助金を支給しています。勤め先が倒産の憂き目にあったり、収入減となり困窮する世帯も数多くあります。こうした現状から一日も早く脱出するためには、日本経済全体の活性化を図るほかありません。

 

 

 「新型コロナ対策」と「社会経済の再開」という厄介な二律背反に菅内閣は直面しています。具体的には、今まさに「Go Toキャンペーン」の是非が問われているのです。緊急事態宣言を再び発出して感染を抑え込むか、経済を活性化させるために同キャンペーンをこのまま続けるか。分科会の尾身会長が言う「今が最後のチャンス」という警告を菅総理はどのような気持ちで受け止めたのでしょうか。