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小池都知事のプライドが許さない「自衛隊看護師」の派遣要請

 急速に医療体制が逼迫しつつある中、大阪府の吉村洋文知事が自衛隊看護師の派遣要請を打診していたことを、西村康稔経済再生担当相が6日、NHK番組で明らかにしました。

 吉村知事は前日の5日、読売テレビの番組に出演した際に、「自衛隊とのやり取りを始めている」と語り、今月15日から稼働させる「大阪コロナ重症センター」で働くに看護師が80人程度不足している状況に、「自衛隊の中にも看護師さんがいるので、ありとあらゆる手段を尽くして何とか一床でも動かせるように(したい)」との考えを述べました。

 

 

 大阪府が独自に設けた「大阪モデル」において「非常事態」を示す赤信号を3日夜に初めて灯し府民に向けて、今月15日までの期間は不要不急の外出を自粛するように呼びかけました。その時点ですでに重症患者の受け入れ可能な病床数の使用率が70%に迫る勢いだったため、「医療における非常事態宣言と言える状況」(吉村知事)への対策の一つとして、今回の「自衛隊看護師」の派遣要請を行ったのです。

 

 

吉村府知事の「危機感」

 

 

 吉村知事の「あらゆる手段を尽くす」と言う発言には、相当な危機感が感じられます。もっとも、通天閣タワーに赤いイルミネーションを灯しても、何ごとにも楽天的な大阪府民の心にはさほど響かなかった模様です。「赤信号」で警告を発してから初めての週末、道頓堀などの繁華街はいつもとほぼ変わらぬ人出となりました。

 

 

 ともあれ、吉村知事が強い危機感を抱いていることは誰の目にも明らかだったはず。熊本地震などの大災害時に自衛隊に派遣要請をすることはありますが、それすらも自治体トップの考え方ひとつで、躊躇われることすらあるのです。自衛隊派遣に対する何か特殊な「思い」は確かにあるようです。吉村知事がそうした個人的な「思い」をお持ちなのかどうかはわかりませんが、専門的な知識を有し任務に極めて忠実な自衛隊員が派遣されれば、現場の医療従事者は大いに心強く感じるに違いありません。

 

 

 災害現場などで危険な任務に進んで立ち向かっていく自衛隊に対して、かつて大物政治家がこう宣うたことがありました。「暴力装置」たる自衛隊という俄かには信じがたい表現を用いたのです。今時、「暴力装置」などという言葉を発するのは、”古色蒼然、”ゴリゴリ”の左翼思想家しかいないでしょう。2010年当時の「赤い官房長官」と言われた仙谷由人氏が今から10年前(!)に参院予算委員会で実際にこの言葉を用いたのです。60年代の昔話ではなく、(当時の)民主党政権時代の出来事なのですから驚きます。

 

 

 吉村大阪府知事自衛隊に対してどのような「思い」を抱いているのかは別としても、府民を新型コロナウィルスから守ろうという強い思いは伝わったはずです。新型コロナに感染し重症化した府民の命を守るために、吉村知事の「一床でも動かしたい」との強い気持ちは、感動的ですらあります。

 

 

「プライド」が許さない

 

 

 全国一、感染者数の多い東京都はどうでしょうか。果たして小池百合子都知事は吉村氏のように「あらゆる手段を尽くして」いるのでしょうか。「一床でも動かせるように」するために、自衛隊の看護師を派遣要請する”度胸”があるかどうか。

 

 

 これまで小池知事は「コロナ対策」を巡り、度々政府と衝突を繰り返してきた経緯があります。直近では、「Go Toトラベル」の制限に関して、「国が判断すべき」として当初、新規感染者数が急増する中にあっても同キャンペーンを中断しようとはしませんでした。菅総理との会談を重ねて、ようやく今月1日、小池氏ではなく総理が、「65歳を超える高齢者と基礎疾患のある人に対して、東京発着の旅行を自粛するよう呼びかけを行ったのです。ここに至るまでの一連の流れには、小池氏の”高すぎる”プライドがあったことが容易に想像できます。

 

 

 小池百合子氏が自衛隊に対して一体、どのような「思い」を抱いているのかなかなか推し量りがたいところがありますが、誰の目にも明らかな・あの「プライド」の高さから考えて、なかなか自衛隊の看護師派遣を要請しようとはなさらないでしょう。

 大阪府のコロナ患者の受け入れ能力と都のそれとは規模が違うかもしれません。それでも、欧州諸国のような「ロックダウン」の事態まで至らずとも、すでに感染症対策分科会の尾身会長が警告した「(爆発的な感染拡大を抑えるための)最後のチャンス」からすでに3週間が過ぎ、一向に新型コロナの流行は収まる気配が見えません。

 

 

 都知事の要請で菅総理が”渋々”ながら東京発着の「Go Toトラベル」の利用に際して、65歳以上と基礎疾患のある人には「自粛」を求めたものの、同キャンペーンの運用見直しに踏み切らなかったことで、今後どのような結果がもたらされるのでしょうか。専門家の意見は概ね、一致しているようです。それは、紛れもなく「パンデミック」に他ならないのです。

 

 

 政府の分科会が導き出した結論は、尾身会長の主張する「人の移動の抑制策が必要」ということです。つまり、「経済再生の切り札」となる政策である「Go Toキャンペーン」自体の見直しを要求したのです。政府の専門機関が菅内閣の政策に待ったをかけたわけです。

 

 

 このままさらに感染状況が悪化すれば、東京都も早晩、大阪府のように医療体制が逼迫することは目に見えています。東京都民の命を守るためには、重症患者のカウントを全国標準にしたうえで「実数」をきちんと明示すること。そして、正しく医療体制の逼迫状況を踏まえて、自衛隊看護師の派遣要請をも辞さぬことです。小池都知事にその高すぎるプライドをかなぐり捨てる「覚悟」がおありでしょうか。