明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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巷にはびこる「ウレタンマスク警察」にご注意を!

 開拓時代の大ウェスタンではあるまいし、誰もが正義の名のもとで裁きを下すということが、現代の日本社会で公然と行われているとしたら、皆さんはどう思われますか。

 信じがたいことですが、今、江戸時代の大岡裁きの如く、街中や公共交通機関などで「マスク狩り」が始まっているのです。

 

 

「マスク警察」の出現

 

 

 「マスク狩り」という表現は少々誤解が生じるかもしれません。正確には「ウレタンマスク警察」と呼ばれる人々のことを指します。

 

 

 戦後初の緊急時代宣言が発出された昨年には、新型ウィルスを何とか遠ざけたいという思いから、大量買い占めによりマスクがドラッグストアやスーパーから一気に姿を消したのは、記憶に新しいところです。当時、品薄のマスクに便乗して、中国製の粗悪品が高値で販売されたりもしましたが、その後、徐々に日本の各メーカーが自社ブランドの高品質マスクを販売するに至り、買い占めはなくなりました。

 

 

 いつの世にも”悪徳”商人がいて、人の弱みに付け込んで暴利を貪ろうとするもの。ネット時代にあっては、素人でも品薄のマスクやアルコール消毒液を高値で転売するというけしからぬ輩が後を絶たず、ついには行政が悪質な転売を禁止する措置を講じる事態となりました。

 

 

 今や外出する際に、マスク着用が常識です。政府の分科会などが提唱した「新しい生活様式」はあまねく日本人の間で浸透していった模様です。ファッションブランドのマネキンですらマスクを着用しているくらいですから、日本人の美徳の一つである、厳格に規律を守る姿勢は、大いに誇れるものと言っていいでしょう。

 

 

 マスクが日常生活に欠かせないモノとなった今、その材質にも関心が集まるようになりました。

 開店前の薬局に行列が出来た頃には、マスクなら何でもいいから欲しがったものですが、今は違います。ひと頃、高値で取引された中国製の粗悪品など、見向きもされなくなったのです。

 粗悪品に懲りた消費者はやがてシャープやユニクロアイリスオーヤマなどの日本メーカーが次々と日本製の高性能マスクに乗り出すようになると、そうした一流品に飛びつくようになったわけです。

 

 

「ウレタンマスク」は悪なのか?

 

 

 マスクが品薄状態でなかなか入手できない時には、苦肉の策として各家庭ではお手製の布マスクで凌ぎましたが、スポーツメーカーなどが開発したウレタン素材のマスクが発売されるようになると、これも飛ぶように売れました。使い捨ての不織布マスクに比べて、ウレタンマスクは何よりも呼吸がしやすいのが特徴で、スポーツやジョギングなどの時に大いに重宝されたのです。

 

 

 ところが、です。このウレタン製のものは通気性が良い分、息を吐き出す際の「濾過」性能については不織布に劣ることが判明したのです。つまり、飛沫防止の観点から言えば、ウレタンマスクは不十分ということです。

 とはいえ、不織布マスクでも飛沫を完全にシャットアウトできるわけではありません。医療用として使用されるN95等はウィルスや細菌の侵入を防ぐことが出来ても、呼吸がしにくく、息苦しく感じるので、一般向けとはいえません。

 

 

 一見したところスタイリッシュで呼吸の楽なウレタンマスクですが、”弱点”ありということで、やはり一般人が新型コロナウィルスの感染拡大を防止するには、不織布マスクの方に利点があるようです。不織布は使い捨てですから、何だかもったいないような気もしますが、性能差を考えれば仕方がないのかもしれません。

 

 

 ウレタンマスクよりも一般向けの不織布マスクの方が確かに感染防止により効果的ですが、医療用マスクほどではありません。不織布マスクでさえあれば万全というのではないのです。

 

 

 「コロナ禍」の中、生き延びてきた私たちは日々、マスコミの報道やネット情報などを通じて「新型コロナウィルス」に関する知識を蓄積させています。耳学問でも何でもとにかく学習した成果をつい他人に披歴したくなる方が少なからずいます。

 「ウレタンマスクでは飛沫が飛んでしまう」「不織布マスクでなければならない」と固く信じ込み、街中で、通勤電車やバスなどの公共交通機関などでウレタンマスクを着用している人を見かけようものなら、いきなり無遠慮にこんな罵声を浴びせ掛けるのです。

 

「君たち、ウレタンマスクは止めなさい!すぐに不織布に替えなさい」

 

 

 緊急事態宣言が発令されている中、不要不急の外出を控えるように要請されても、たとえばリモートワークが出来ない会社員や通学する学生は、やむなく結構混雑する電車やバスに乗らなければなりません。その際には、なるべく会話は控えるようにと車内アナウンスされてはいますが、それでもインドの修行僧じゃあるまいし、移動中に終始無言で過ごすのはまたなかなかつらいものです。

 とくに4,5人の学生や若い会社員のグループはついおしゃべりに花を咲かせてしまいがちです。

 

 

 しっかりと不織布マスクで防御して「不要不急」ではない外出をされている方の中には、こうしたおしゃべりグループが目障りで仕方がないようです。さりとて赤の他人に向かって、罵声を浴びせるのはどうにも感心できません。

 他人の振り見て我が振り直せ、と言いますが、人の行動を注意する前にそれまでの自らの行いを省みるべきではないでしょうか。

 

 

 今国会にて、特措法の改定について与野党が議論を戦わせていますが、もしも法の改正によってウレタンマスクの着用者に対して罰則規定が盛り込まれるのであれば、たとえ見ず知らずの人であろうとも法を破る者に対して厳しく対処するのは是認されるかもしれません。でも実際には、国会議員も日本医師会や政府の分科会会長も誰一人として、ウレタンマスクは悪であるとは言っていません。決してウレタンマスクがいけないわけではないのです。

 

 

 耳学でたまたま知り得たわずかながらの知識を誇示するが如く、ウレタンマスクの人を一方的に非難することは明らかに間違っていると思います。常軌を逸した・礼儀知らずな「ウレタンマスク警察」には、皆さん、くれぐれも気を付けましょう。それほどまでに他人のことが気になるのなら、ステイホームに徹していただきたいものです。罵声を浴びせる行為の方がよほど周囲に飛沫をまき散らす危険が高いのですから。