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「3密」のパリ市民に「安全・安心な五輪」は可能でしょうか?

 8日に閉会式を終えた「2020東京オリンピック大会」。大多数の国民が五輪開催に否定的な中、感染状況が一向に改善されないうちの五輪開催という、オリンピック史上最も”困難”な大会となりました。緊急事態宣言が発出される最中、いかに「安全・安心な五輪」を実現させられるか、世界中が注目した大会でもあります。

 

 

異例尽くし

 

 

 バッハIOC会長は参加総人数の1%に満たなかったと胸を張りましたが、選手や大会関係者から437人の感染者が出たことは、決して少ない数字ではありません。選手団を受け入れる初期段階では空港検疫でみすみす陽性者を見逃すという失態はあったものの、メディア関係者を含む五輪の関係者を徹底的に”封じ込め”ることで、これだけの人数に抑えることが出来たことには及第点を与えてもいいでしょう。

 

 

 各国の代表選手に至っては来日してからはずっと「行動制限」を課して、五輪バブルから表に出さないことが功を奏したことは確かです。むろん、日本で働きたかったと言う身勝手な理由で”脱走”を企てたり、無断で東京観光に出た選手もいます。が、大部分の関係者は日本人が重んじる「規律」を見習ったのかもしれません。

 日本側の徹底管理下に身を置くことに同意しそれを最後まで守ったのは、さすがは自国の代表者たる自覚を持った選手だけのことはあります。もっとも閉会式の興奮冷めやらぬうちに、つい街中に繰り出してアルコールの酔いに身を任せた不届き者もいましたが。

 

 

 今回の東京五輪は「異例尽くし」の大会でした。本来ならば観客で埋め尽くされるはずのスタジアムは最後まで無観客のまま。巨費を投じて建設した”自慢の”オリンピックスタジアムには、競技関係者以外は入れません。華々しい演出を競う開会式も、観客の姿はありません。閉会式も同様で、色とりどりの照明が映し出す無人の客席の頭上に花火ばかりが派手派手しく夜空に舞い上がりました。その代わり会場の周辺には、せめて花火だけでも見物しようという人たちが大勢集まっていました。見せるためのショーは見られずに、遠くからチラ見するほかないとは何とも不思議なパラドックスです。

 

 

 開会式で天皇陛下が開会宣言される際に、うっかり起立するのを忘れて不敬との誹りを受ける羽目となった菅総理小池都知事。閉会式では陛下の名代として秋篠宮後嗣がご列席されましたが、お言葉は述べられることはなかったために前回のような”失態”を繰り返さずに済みました。

 小池知事が式の終盤で次の開催地のパリ市にオリンピックシ旗を手渡しました。そこでVTRで3年後のパリ五輪の開催を待ちわびるパリ市民の様子を映し出したのですが、大きな広場いっぱいに大勢の人々が集合して歓声をあげる場面には驚きを禁じ得ませんでした。あのシーンはまさしく3密そのものだったからです。

 

 

「ラテン気質」

 

 

 今さらではありますが、3密(3つの密)とは密閉、密集、密接のことです。新型コロナの感染を抑制するためには、この3密を避けることが基本です。私たち日本人は政府や行政や専門家から3密にならぬように注意せよと繰り返し聞かされてきました。規律を守ることに”長けている”日本人ですから、3密を避けることに関してはすでに習慣になっているくらいです。

 

 ところがどうでしょうか。あのパリジャン、パリジェンヌたちは老若男女揃いも揃ってノーマスクもへっちゃらで、みっちりと密着して大歓声をあげているではありませんか。あれでは3密も何もあったものではありません。もうフランスでは「COVID-19」を完全に克服したのでしょうか。いや、そんなはずはありません。今や世界中で従来型から「アルファ株」や「デルタ株」、「デルタプラス株」等、様々な変異種が席巻しつつあります。フランスだけが例外のはずがありません。

 

 

 確かに日本は「ワクチン後進国」と言われていますが、フランスを含むワクチン接種率が高い諸外国でも、一向に「新型コロナ」は収束の兆しさえ見えません。ひと頃、ワクチン万能説が流行りましたが、それも過去のこと。今ではワクチンを接種後に変異株に再感染するケースが急増しています。ワクチン接種で抗体が出来たとしても決して安心はできないのです。

 

 

 来年、北京で開催される冬季五輪では、今回の東京五輪の運営方法が大いに参考になったことでしょう。2022年大会は感染状況がよほど改善されない限りは恐らく「無観客」開催という選択肢もあるかもしれません。3年後の2024年パリオリンピックが開催される頃には、「コロナ禍」は完全に消え去っているでしょうか。

 

 

 人類の叡智を以てすれば、如何なる困難をも克服できる。そう信じたいところですが、残念ながら今回の「新型コロナ」はこれまで人類が経験したことのない”強敵”のようです。いや、そんなことはない、もうすぐどんな変異株にも効果のあるワクチンや治療薬が開発されるはず。そうなれば良いのですが、果たして。

 

 

 3密など知ったことではないとばかりに人々が密集し大歓声を上げているパリの人々。あれは次回のパリ五輪をPRするための”演出”であって、普段のパリの人々は感染防止に努めているはずだと思いたい。でもラテン気質のフランス人がどこまで我慢できるのか。彼らが律儀に「3密」を避けてマスク着用し、大勢でカフェやリストランテに行かない、ワインを飲まないとは、とても思えないのです。

 3密のパリ市民が3年後に「安全・安心な」パリ五輪を無事開催することは果たして可能でしょうか。