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異例尽くしで「シュール」な「東京五輪」になりそうです!

 緊急事態宣言が期限切れとなる21日。「宣言」再延長の対象地域である一都三県の首都圏では解除前にもかかわらず、各所で軒並み人出が大幅増となりました。

 都内の20日午後の人出は1月の宣言発出直後の土曜日と比べて、上野駅はプラス42・3%、原宿駅ではプラス76・1%、お台場はプラス91・3%でした。

 

 

 そもそも21日に「宣言」を全面解除することは政府内では既定路線でした。菅総理の会見での発言を聞く限り、やれ感染防止のための5つの柱やらもっともらしいことを述べていても、その言葉は空疎に響くばかり。

 医療体制の逼迫の度合いが基準値をクリアしたからといって、すでに変異株の市中感染が明らかになった今、「新型コロナ」の脅威は少しも減じてはいないのですから。

 

 

「ワクチン」も万能ではない

 

 

 専門家の間では、下げ止まりか微増傾向にある現状がこのまま推移すれば、必ず感染第4波が到来すると指摘する声があがっています。その時期を統計的に割り出すと早ければ5月中に、遅くても6月までに感染者数はピークを迎えるといいます。

 

 

 ワクチンの接種が順調に進めば、感染状況は多少なりとも好転するだろうとの楽観論もありますが、果たしてそうなるでしょうか。すでに国民の25%以上がワクチン接種を終えた「ワクチン先進国」のチリでさえも、新規感染者数は高止まりの傾向が続いているというのです。

 

 

 その理由はいたってシンプル。ピニェラ大統領ご自身が500万人がワクチン接種を終えたことに対して、「すべてのチリ人に対して与えられたメリットだ」とVサインを出して嬉しそうに演説し、それを聞いた国民は大喜び。さっそくマスクなどかなぐり捨てて街中に浮かれ出たために、折角のワクチン効果はプラスマイナス、ゼロとなったのです。

 

 

 他国の失敗を笑ってばかりはいられません。翻って、我が国の場合はどうでしょうか。前述のように、緊急事態宣言の発動中にもかかわらず、今ではすっかり「コロナ慣れ」してしまった感があり、週末の繁華街の人出はいや増すばかりではありませんか。

 

 

 およそ2か月半に及んだ「緊急事態宣言」がとうとう解除されるや否や、これまでの”鬱憤”を一気に発散しようと、一体、どのようなことが起こるのか。政府の示した方針を守れるのか、それともチリの国民のように、これでもう安心だとすっかり油断してしまうのか。もし後者となった場合には、最悪の結果を招くことは火を見るより明らかです。

 

 

シュールな「五輪」に

 

 

 20日、大会組織委員会と政府や東京都、それにオリンピック、パラリンピックそれぞれの国際委員会による、いわゆる5者会談の席で、海外からの観客の受け入れを見送ることが決まりました。この方針については、国内外に波紋を投じることとなりました。

 

 

 そもそもオリンピックとは、世界中の国々から文字通り国境を越えて集う、平和のスポーツ祭典であるはず。とはいえ、ロシアが組織的にドーピングを行っていたことが判明し、大会から除外されました。平和の祭典とは表向きの標語であって、その裏では開催地を巡る争いから始まり、メダルの数を競い合う国と国との”争い”という一面もあります。「平和の祭典」とは必ずしも言い切れない部分もあるのは事実です。

 

 

 それでも、前回の東京大会から50余年目の今回の東京オリンピックパラリンピック大会は、とかくきな臭い国際情勢にあってさえ、「平和の祭典」を開催することで多少なりとも世界が平静さを取り戻すことに繋がればという思いがあります。やや乱暴な言い方をすれば、五輪の開催中には、「米中戦争」は一時的ながら”停戦”せざるを得ないわけです。「参加することに意義がある」というのは核心を突く言葉といえるでしょう。

 

 

 残念ながらいまだに開催国の日本人の大半が「東京五輪」に対して否定的な考え方をしています。しかしすでに賽は投げられたのです。もう後戻りは出来ません。5者会談の結果、「海外からの観客の受け入れはなし」となりましたが、それも日本の世論と考え合せれば、やむを得ない選択と見るべきでしょう。

 そうです。日本国内では、まだ「ワクチン接種」も十分に進んでおらず、また今後、さらなる脅威となることが確実視されている「変異株」の感染拡大が懸念されます。まさに今回の「東京五輪」は不安だらけの大会になるに違いありません。陸上選手のように高いハードルを易々と超えられる自信など、大会委員会を始めとして私たち日本国民にもありません。それでも開催する以外の選択肢はないのです。

 

 

 大相撲春場所が開幕しましたが、ちょうど1年前の春場所は新型コロナの感染拡大により無観客で開催されました。夏場所は無観客どころか中止となりました。もっとも「八百長問題」が発覚して、2011年の春場所が中止に追い込まれた過去がありますが。いずれにせよ、長い歴史と伝統の大相撲において、無観客や場所の中止は異例中の異例な出来事でした。

 

 

 大相撲よりもさらに長い歴史のあるオリンピック大会は、過去に5回中止されたことがあります。中止の理由はいずれも戦争でした。今回の東京大会はすでに昨年に開催されるところを1年間延期するという”異例”の五輪大会です。

 

 

 再び話を大相撲に戻しますが、今年の春場所は観客を入れてはいますが、空席だらけでがらんとしています。何よりも奇異の感があるのは、客席からの応援の掛け声が一切掛からないことです。それは感染防止のために会場に配置された係員が客席に向けて、大声を上げぬように、マスクを着用するようにと注意を喚起しているからです。

 

 

 東京オリンピックもきっと大相撲と同じような雰囲気になることでしょう。恐らくはこんな感じでしょうか。

 観客同士が十分なソーシャルディスタンスを取るために、まばらに離れて席を取る。代表選手への応援の掛け声は不可で、拍手は可。何よりも各国を代表して参加している選手の皆さんに対して、お国からの応援団はゼロで、選手は孤軍奮闘を強いられる。日本人と日本在住者のみの観客がまばらに席に収まり、目の前で繰り広げられる世界一のスポーツ大会の様子を無言で見つめるばかり。散発的に拍手が起こり、あとはしんとした競技会場。

 

 

 紀元前776年に古代ギリシャオリンピアで始まったというオリンピック。2021年の「東京五輪」ほど、異例尽くしで「シュール」な大会には、ギリシャ神話のゼウス神もさぞかし驚愕されることでしょう。