戦禍のウクライナに「春一番」が吹くのはいつ?
春一番が首都圏に吹いた日、ウクライナではロシア軍が民間施設を攻撃し、多数の死傷者が出ました。いかに平和ボケした日本人でもロシアの侵略によるウクライナの惨状を目の当たりにして、たった今、現に戦争が起きていると言う事実に慄然としたに違いありません。
それでも爆撃は止まず
プーチン大統領の暴挙に世界中が怒りの声を上げています。すべての交戦国に対して中立であるはずの永世中立国たるスイスでさえも、EUの対露制裁に歩調を合わせる決定を下しました。第二次世界大戦時も中立を貫いた同国が、これまでの国是を曲げてロシアの暴挙を許さない姿勢を示したのです。
アメリカのバイデン大統領はもちろんのこと、岸田総理も最大限の強い言葉でロシアを非難し、他の西側諸国と歩調を合わせて対ロシアへの制裁措置を講じる旨、発言しました。強い制裁措置を取ると言いますが、その中身はプーチン氏をはじめとするロシア関連の資産の凍結や金融市場からの締め出しが主な内容です。
大国ロシアとはいえこれらの経済制裁は同国の国力を弱体化させる効果はある程度見込めるでしょう。しかし、経済制裁だけでは不十分だと言わざるを得ません。戦禍のウクライナでは世界最大級の原発が攻撃され、市街地の住居を爆撃するなど、ロシア軍の攻撃はますますエスカレートしています。今こそただちに戦闘を中止させるための制裁が必要です。生温い経済制裁などではロシア軍の攻撃は止みません。
サッカー元日本代表の本田圭佑選手が先月27日、自らのツイッターで次のような意見を述べています。
「もし本当に助けたいなら武器を売ったり送ったりしんくてもいいから、軍隊を派遣して守ってあげてください」
この意見には非難の声が少なくなかったようですが、戦争を回避するための本質的な議論がなされていない点を指摘して、
「今後のことを考えると日本も他人事ではない」と警鐘を鳴らしました。
本田選手に指摘されるまでもなく、戦争回避への国際的な議論が不十分だったことは明白であり、ロシアのウクライナ侵略は不可避な状況でした。ウクライナには史上最悪の原発事故を起こしたチェルノブイリ原発やザポリーニャ原発があり、今回、世界最大の原発にも砲弾が撃ち込まれたのです。こうしたロシア軍の容赦ない攻撃に、プーチン大統領は正気を失っているのではないかと囁かれ出しました。
「世界の終わり」
第三次世界大戦の勃発か。原発破壊によってヨーロッパのみならず地球全体が放射能に汚染されてしまうのか。いずれであっても、それはこの世の終わりを意味します。
西側諸国とロシア、中国の社会主義国家の対立激化で、いつ世界大戦が勃発してもおかしくありません。「世界の終わり」は目前に迫っているのです。
かつて米ソが核兵器の開発競争に狂奔していた時代に、このままでは核弾頭が発射される恐れがあると国際社会が危惧し、その後、国際協定を結び軍縮へ舵を切ったかにみえました。ところがどうでしょう。いざロシアのような軍事大国が本気で戦争を始める時には、過去の”遺物”だった核弾頭の埃を払い、核兵器の使用も辞さずとなってしまうのです。
一度、核を保有した国は二度とそれを手放すことはありません。いざという時に備えるという名目があるからです。そのことが今回のロシアのウクライナ侵攻で証明されました。プーチン大統領の口から、我が国は世界有数の核保有国であるという脅し文句が出たのです。
さて、今現在「終末時計」の”残り時間”はどれくらいなのでしょうか。今年1月20日時点では、残り100秒でしたが、ロシアが戦争を始める以前のデータですから、今ではその半分、いやもっと少ないはず。残り10秒を切っていよいよカウントダウンが始まったに違いありません。
英国のロックバンド、ザ・キンクスのヒットナンバーに『エイプマン』という曲があります。歌詞の一部を拙訳ですがご紹介します。
「この世界はもう安全じゃない
核戦争で死ぬくらいなら
どこか遠くの島に行って、猿人のようになりたい
僕はエイプマン。猿人です。キングコングの男です」
キンクスはストーンズとほぼ同時期に結成された英国のバンドで、ストーンズほどの大成功は収めなかったものの、多くの佳曲を生み出しました。皮肉たっぷりのひねりの効いた歌詞がなかなかのセンスです。筆者を含め今でもコアなファンがいます。
同曲が発表されたのは1970年ですから、50年以上前ですが、地球上のどの生物よりも進化した人類が文明や都市を築いたけれども、核戦争の脅威の中で生きるくらいなら、エイプマンになった方がましだというは、今だからこそ大いに頷けます。
ウクライナに春が訪れるまで
「終末時計」がいよいよ最後の時を告げる前に、キンクスの歌うように「エイプマン」になる道を選びましょうか。いや、核兵器が火を噴いたが最後、どこかの無人島でももはや生き残れないでしょう。もう地球上のどこにも安全な場所は存在し得ないのです。
キューブリック監督の映画『博士の異常な愛情』のラストシーンが目に浮かびます。核爆弾の炸裂でもくもくとキノコ雲が上空に広がっていく、あの場面です。地球が滅亡する場面で流れるヴェラ・リンの歌う甘いメロディ。『We"ll Meet Again』。
「また逢おうね
いつになるかどこで会えるか
わからないけれども
青空の下できっと
(中略)
微笑みを忘れないで
いつもあなたがやっていたように
青空が雨雲を追い払うまで」
戦禍のウクライナに「春一番」はいつになったら吹くのでしょうか。
その日が来るまでは微笑みを忘れずに…。また逢えますように。