明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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「ながら運転」罰則強化でも交通事故は減らないと思いませんか?

  自動車の運転中にドライバーがスマホやカーナビを操作するために画面を注視する「ながら運転」について、罰則が強化されたことはご承知のとおりです。運転中に他のことに気を取られることは、前方不注意になりやすく、非常に危険です。最近、駅などで歩きスマホをやめましょうというアナウンスが流れていますが、歩きながらでも前方への注意が散漫となり、他人にぶつかったり、最悪の場合、ホーム上から線路へと転落する重大事故を招く恐れがあります。歩いていても危ないというのに、重量が1トン以上もある乗り物が時速何十キロというスピードで移動する中、前方をよく見ていない運転者がいたら、どれほど危険なことでしょう。「ながら運転」を少しでも減らそうということで、厳罰化したのは当然だと思います。

 

 

 その「ながら運転」について、実際に取り締まりの場面では、スマホ、カーナビの画面をどの程度見ることを”注視”というのか、曖昧です。道交法にも、注視するという行為を具体的に規定した文面は見当たりません。そうした曖昧な表現が取り締まりのグレーゾーンとなり、今後、問題になりそうです。曖昧さを残した規制では、取り締まる側とドライバー側との間に認識の差が生じることでしょう。果たして、今回の罰則強化が、どの程度、交通事故を減少させる効果があるのでしょうか。

 

 

カーナビ操作に潜む危険性

 

 

 今やカーナビの装着車の割合は高く、自家用車のほとんどに装備されているようです。カーナビが登場する以前には、目的地までの道順をあらかじめ道路マップで調べておく必要がありました。たとえ下調べしていても、必ずどこかで道順を再確認しなければなりませんでした。初めて通る道路や土地勘のない場所をマップを一読しただけで完璧に把握できるはずもないからです。運転中に果たして右へ曲がればいいのか、それとも左が正しいのかわからなくなったり、道に迷って現在どこを走行中なのかすらわからないということを何度も経験しました。その都度、路肩に車を停車して分厚い道路マップを開いて必死に道順を確認するしかなかったのです。

 

 

 最悪の場合、信号待ちで慌てて調べたりしていて、青信号に変わったことに気付かずに、後続車にクラクションを鳴らされたこともあります。でも運転中に道路マップを見ることはさすがに出来ません。地図を確認するためには、どうしても車を停車状態にする必要があります。その点、カーナビは走行中の位置が常に画面に表示されているので、走行中でもついその画面を注視してしまいがちです。カーナビ以前には、道路マップの見ながら運転というのは、あまりなかったと思います。

 

 

 カーナビが普及した現在、不案内な道を走行している時には、画面を注視してしまいます。道路マップを開くのと違い、カーナビはいつでも走行中の自車位置を表示していて、その先の道路も案内してくれるので、少しでも道に不安を覚えたら、つい画面を見てしまうのです。それが「ながら運転」ということで、取り締まりの対象になるのです。ただし、前述のとおり、”注視”することはダメでも、チラ見ならセーフなわけです。とはいえ、たとえチラ見であっても、その数秒間は前方不注意の状態で走行することになるのですから、「ながら運転」には違いはありません。注視していようと、チラ見であろうとも、前方不注意となる危険性は高まります。

 

 

 スマホの場合、運転中に通話の操作をすることは言うまでもなくアウトです。通話しなくても画面を”注視”していれば罰則の対象となります。でも、ハンズフリーならば取り締まりの対象外なのです。これも如何なものでしょうか。いくらハンズフリーであっても運転中に通話していれば、当然、前方への注意が疎かになる可能性があります。また、スマホを手に持ちながら運転しても、交通の危険を生じさせなければ、規制の対象外とのことです。何だかややこしい話ですが、要するに、運転中に前方不注意などで交通の危険を生じさせなければ、スマホを手に持っていても、カーナビをチラ見しても、規制されないわけです。でも厳密に考えれば、それらの行為も含めて「ながら運転」ではないでしょうか。何かをしながら運転しているのですから。

 

 

 運転中にラジオのディスクジョッキーのトークに聞き入っても、好きな音楽を聴いていても、さらには助手席に座る友人や恋人との会話に夢中になっても、それらの行為はすべて「ながら運転」になり得ると思います。道交法の規定するところでは、「交通の危険を生じさせない」ことが大前提です。「ながら運転」をすることでその前提が守られなくなる恐れがあるからこそ、規制を強化したのです。ならば、例えば車に誰も載せず、ラジオも音楽も聴かず、もちろんカーナビもスマホもなしで運転すれば交通事故はなくなるのでしょうか。私見ですが、それでも事故が起こる時には起きると考えます。一人で運転していると、かえって考え事をしてしまうもの。居眠り運転になるかもしれません。

 

 

 「ながら運転」ばかりではなく、いろいろなケースによって、前方への注意が疎かになるのです。それこそ、AI搭載の完全自動運転の車だけになれば、交通事故は起こりにくくなることでしょう。もしも相田みつをが車を運転したら、こんなことをつぶやくことでしょう。

「ながら運転しなくても 事故を起こすかもしれないじゃない、にんげんだもん」