明日を元気に生きるための「心の処方箋」

頑張り過ぎて疲れたあなた、心を痛めたあなたへ。言葉の癒しを実感して下さい

一生の思い出「卒業式」が中止なんて酷過ぎます!

 桜の咲く校庭で、全校生徒の見守る中、旅立って行く仲間を見送る卒業式。校長先生の祝辞を少し緊張した面持ちで聞き入る卒業生ひとりひとりに、先生方は涙を流しながら心の中で「頑張れよ」と語り掛けていることでしょう。春うららかな陽気の中、人生でたった一度しかない卒業式は、一生忘れえぬ思い出として深く心に刻まれます。生涯の思い出となるはずの卒業式が、今年は、中止または延期されるというのです。

 

 

「卒業写真」の思い出も

 

 

 荒井由実の『卒業写真』は学校を離れ、社会人となった自分を励ましてくれる卒業写真をセンチメンタルに歌い上げた名曲です。でももしも卒業式自体が中止されたら、

 悲しいことがあると開く革の表紙

 とはなり得ないでしょう。卒業式という青春の1ページが失われるのですから。

 

 

 安倍総理はこれ以上の新型肺炎の蔓延を阻止するために、「大切な思い出」を取り上げようとしています。むろん、大量感染から子供たちを守るという大義名分があることは認めます。それでも、青春時代の大事な思い出を奪うのは、あまりにも酷ではありませんか。

 

 

 保護者や来賓者の参加もなく、全校生徒が集まり卒業生の新たな人生の門出を祝うことすらできないとしたら、それはただの学年集会に過ぎません。祝福ムードに溢れるからこそ、去りゆく生徒たちは深く心を打たれるのです。

 小学校の6年間、中学・高校の3年間を締めくくる、かけがえのない儀式なのです。青春という短い一時期のことを思い出すたびに、必ずや卒業式の感動が蘇るはず。甘酸っぱくてほろ苦い、卒業式の思い出。何とか彼らに「卒業式」の記憶を残してあげたいと願わずにはいられません。

 

 

 全国の国立大学では政府の要請を受けて、いち早く卒業式の中止を決めました。私立大学の中にもそれに準じて、取りやめるところも多いようです。暖冬のお陰で今年の桜は例年よりも早く開花するとのことですが、せっかく桜の咲くキャンパスに、卒業生の姿が見られないのは寂しいですね。毎年、卒業式シーズンには袴姿も凛々しい女子学生の姿がそこここに見られますが、今年は街中の風景も味気ないものになりそうです。

 

 

人生の「分岐点」

 

 

 ジョージ・ルーカスが脚本・監督を担当した『アメリカン・グラフィティ』は、1962年のアメリカの片田舎を舞台にした青春映画です。卒業を間近に控えた高校生たち。ある者は進路について悩み、ある者は社会に踏み出す勇気を必死に探し出そうともがく姿を丁寧に描き出します。

 成績優秀で都会の一流大学に進学することが決まった男子学生は、卒業パーティを機にガールフレンドに別れを告げようとします。卒業パーティのクライマックスで、その年のベストカップルに選ばれたふたりは、会場に集まった全員の前でスポットライトを浴びてダンスを披露します。ラストダンスを踊りながら、男の子は一流大学へ進学することよりもガールフレンドと地元に残る道を選ぶのです。

 

 

 いやはや何度見ても泣けるシーンです。日本の大学では、卒業生全員が集まる大掛かりなパーティを開催する習慣はありませんが、お世話になった教授を囲む、謝恩会はあります。さすがにあの映画のワンシーンのようなことは起きませんが、謝恩会が終わればそれぞれの道に分かれて、中にはもう二度と会えない学友もいるかもしれません。教授と親しく談笑出来る機会もそう多くなないでしょう。

 卒業式というのは、人生の分岐点なのです。

 

 

 青春のひと駒などといったらいかにも青臭く感じてしまいますが、卒業式の思い出とはそもそも”青臭い”ものです。人生、100年とか言っていますが、寿命は人それぞれ違っても、青春時代はたった一度きりのごく短期間にしかないのです。

 高校、大学、専門学校を卒業して、社会に出ていき一人前になり、やがてある人は運命の出会いを経て結婚します。またある人は専門的な知識と技術を要する職業に就き、その道を極めようとします。あるいは、いまだにご自分の進むべき「道」を見いだせずに、思い悩む方もいるでしょう。

 人生、いろいろです。それぞれが新たな人生を歩み始める起点が、卒業式なのだと思うのです。

 

 

 学生時代から数十年が経ち、中高年に差し掛かる頃になると、これまで自分が歩んできた道筋を省みて、果たして進んできた道が正しかったのだろうかと深く考える時が来るものです。あの時にもしも別の方向を歩んでいたら、きっと今の人生とは180度違ったかもしれない。ふとそんな風に思ったことはないでしょうか。遮二無二突き進んでいたあの頃を思い出します。たとえどのような道を歩んだとしても、それはあなた自身が選んだことです。

 青春時代は、何もわからずに転んでは立ち上がり、傷だらけになって過ごした日々のことです。大人になってからも、若い頃にはがむしゃらに突き進む時代があり、その後にもまだまだ人生は続きます。

 

 

 人生は文字通り、真剣勝負の連続です。私たちは常に何らかの選択を迫られるのです。そしてどの選択肢をとるのかは、あなたご自身で判断するしかありません。厳しいなぁ。

 

 せんろは つづくよ どこまでも

 のをこえ やまこえ たにこえて

 はるかな まちまで ぼくたちの

 たのしい たびのゆめ つないでる

 

 『線路は続くよどこまでも』の歌詞です。確かに線路はどこまでもつづくことでしょう。終点(命の尽きる日)に行きつくまで。鉄道には、要所要所に駅があります。小さな無人駅から大きな乗り換え駅までいろいろです。「卒業式」は重要な乗り換え駅のようなものです。卒業式がなくなれば、他の方面へ行きたくても、乗り換え駅で降り損なってしまうかもしれません。

 若い人たちが人生の岐路で確実に自分の道を進んで行くために、どうか「卒業式」だけは開催してあげてください。