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「屋内全面禁煙」に「喫煙テロ」が勃発するかもしれません!

 いよいよ来月4月から飲食店や公共交通機関、オフィスなどでの喫煙が出来なくなります。改正健康増進法という法令により、喫煙者とタバコには居場所がなくなるわけです。喫煙場所についても、各自治体により細かい規制があり、そうした厳しい条件を満たした場所でのみ喫煙可能となります。

 

 

喫煙場所をどうするか

 

 

 IT企業や大企業では、もうとっくに喫煙問題については、喫煙所を設置するか、会社のある敷地内も含めて全面禁煙にしているところも少なくありません。東京都内でも区によって微妙に条件が違っていたりするため、日本たばこ産業の担当者に依頼して、喫煙所を設置することもあるようです。

 

 

 実は私の勤める出版社でも喫煙問題については、だいぶ以前から経営者サイドと組合側との間で話し合いを重ねてきました。組合の委員の中でも意見は割れました。この際、全面禁煙に踏み切るべきだと言う強硬意見もある一方で、ヘビースモーカーがとりわけ多いベテラン編集者に、いきなり禁煙しろというのは酷ではないかとの喫煙擁護派もいて、なかなか話がまとまらないのです。

 

 

 結局、建物内に喫煙ルームを設けても、どうしても煙が漏れるなど受動喫煙のリスクが残るとの意見から、屋外の敷地内に「喫煙小屋」のようなものを設置することに決まりました。これが絶対禁煙派と喫煙擁護派のぎりぎりの線で妥協できる案でした。

 

 

 それにしても、結論を出すのがあまりにも遅すぎました。4月までには「喫煙小屋」の完成は到底間に合わないことが判明したのです。これは非常に困ったことになりました。雑誌の締め切り前に泊まり込んで、徹夜で仕事をしなくてはならない”ベテラン編集者”(ヘビースモーカーのことです)にとっては、もしも喫煙が出来なくなったら、仕事に重大な支障を来す恐れがあるからです。

 

 

 新聞社や雑誌編集部を舞台にしたドラマなどで、ねじり鉢巻きにくわえタバコで徹夜仕事する様子をご覧になったことがあるかと思いますが、まさしくアレです。編集者や記者にとっては、原稿に詰まった時などには、どうしてもタバコに手を伸ばさざるを得ないタイミングがあるのです。私などもかつてそのクチでした。

 

 

 中には奥様から厳しく言われているのか、タバコの代わりに「禁煙パイポ」(古いですね)や飴玉をしゃぶって胡麻化している人もいました。でも、いくらタバコを吸わないように我慢していても、となりでスパスパやられたらひとたまりもありません。奥様にこっぴどくお叱りを受けようが、ついタバコに手を出してしまいます。

 

 

 編集者とタバコは切っても切れない深~い関係があるのです。もちろん、一日に3箱、4箱も吸っていたら、健康を害するに決まっています。もしも職種別の癌による死亡者の統計に、雑誌編集者のデータがあったら、きっと他の業種に比べて格段に高い数値を示すことでしょう。わかっちゃいるけど、やめられない!というのが、喫煙者の『スーダラ節』なのです。

 

 

「喫煙テロリスト」

 

 

 条例により細かく定められた諸条件をクリアーした場所でのみ、喫煙できるという風にするのは、喫煙者に対する一種の”嫌がらせ”なのかもしれません。面倒だったらもうタバコを吸うのはお止めなさいとお国が説教しているのです。念のために申し上げますと、私自身は禁煙歴5年のノンスモーカーです。今ではタバコの煙が嫌いになりました。ですから、喫煙者の肩を持つつもりはありませんが、どうしてもやめられない『スーダラ節』の方々には同情を禁じえません。正直なところ。

 

 

 

 タバコの売り上げが激減し、さぞかし企業は困窮しているだろうと思いがちですが、実際はそうでもなさそうです。受動喫煙が問題になり、飲食店などで分煙化が進んだため、分煙コンサルタント業務が大繁盛しました。そして今度は改正健康増進法によって、さらに厳格に条件が課せられるため、各企業ごとに「喫煙所対策」に追われました。喫煙所の設置に関して的確なアドバイジングをする業務で大忙しなのです。喫煙所のレギュレーションが厳しくなればなるほど、喫煙の専門コンサルティングサービスが必要となるわけです。タバコの火はそう簡単には消えないようですね。

 

 

 さて、4月からの全面禁煙で一体、雑誌編集部はどうなるのでしょうか。たった一本の煙草のために、わざわざ近所の喫煙所のある喫茶店へ出向いてはいられません。人は禁止されるとますます欲求が高まるものです。ヘビースモーカーは言うに及ばず、テンポラリーな禁煙者もとたんにタバコを吸いたくなるかもしれません。

 

 

 いくら会社の壁中に禁煙の張り紙があっても、どこかでこっそりと隠れて吸う人はいるでしょう。アイジェイ・ワイダ監督の映画『灰とダイヤモンド』に出てくる、地下組織に属するマチェクのように、黒メガネで変装した「喫煙テロリスト」が出現するようになるかもしれませんぞ。