明日を元気に生きるための「心の処方箋」

頑張り過ぎて疲れたあなた、心を痛めたあなたへ。言葉の癒しを実感して下さい

「強風」では「花見」も出来やしません!

 季節外れの暖かさに桜が一気に満開になりました。三連休の取れた方はこの週末は花見を楽しまれたかと思います。とはいえ、満開を迎えたのは東京地方だけ。都下や周辺地域ではまだまだ満開どころか、ようやく二分、三分咲き程度でした。おまけに、台風のような強い南風が吹き荒れ、コートを持たずに薄手のセーターで出かけたところ、強風に全身もみくちゃにされて、花見を楽しむどころではありませんでした。満開と連休が重なって、絶好の花見日和になると期待していたのに、ちょっと裏切られた気持ちになりました。

 

 

 強風は聖火リレーにも容赦なく襲い掛かりました。連休初日の20日東日本大震災被災3県(宮城、岩手、福島)で行われる「復興の火」としての聖火展示が宮城県石巻市からスタートしましたが、その点火式で風にあおられて火が二度も吹き消えるというハプニングが起こりました。会場となった石巻南浜津波復興祈念公園がある宮城県石巻市20日午後3時の風速は11・8メートル。これではギリシャから大切に持ち帰った五輪の灯はひとたまりもありません。その様子を見て、東京五輪の開催に立ちはだかる「障害」を連想した方も多かったのではないでしょうか。

 

 

 春疾風、春嵐、春荒という季語があるように、春に嵐はつきものですが、4月までにはまだ10日以上もあるというのに、これほどの強風に見舞われるなんて、あんまりですよね。それも例を見ない早い満開と重なるなんて…。何ともついていません。

 

 

「苦難」に満ちた世界

 

 

 新型肺炎パンデミックが止まりません。アメリカのニューヨーク市では、企業の全従業員に出勤停止を要請し、イタリアでも外出禁止令、各国ともこれ以上感染が拡大しないように必死です。第二次世界大戦以降、最大の危機的状況にあると評した政治家もいました。そうした世界的な感染の状況にあって、日本はまだましな方かもしれません。アフリカでの感染者が急増しつつあり、今後、新型肺炎による死者数は爆発的に増加しそうな勢いです。

 

 

 東京オリンピックが予定通りに開催できる望みは、もはやほとんどゼロに近いと言わざるを得ないでしょう。東京五輪を開催するか否かの判断は、早ければ数日中に、遅くとも四月の始め頃には決まる模様です。無観客にしても開催を強行するのか、それとも1年後か2年後に延期するのか、最悪の場合、東京五輪そのものを中止するという選択肢もあり得るのです。石巻市で行われた「復興の火」の聖火が二度にわたり吹き消えたことが暗示するかのように、東京五輪はまさに風前の灯火なのです。

 

 

 春嵐が花見客を襲ったように、今、私たちは以前には想像だにしなかったような不測の事態に直面しています。これは神が与え給うた「試練」なのでしょうか。果たして人類はこんな「試練」を課せられるほどの悪行を重ねてきたのでしょうか。おそらくどの宗教の指導者も、人間の宿業について語るに違いありません。悔い改めよということでしょう。もう私たちをこれ以上、苦しめないでほしい。私たち人間は生きていること、そのものが苦難に満ちているのですから。

 

 

 人は生まれてから亡くなるまで、ずっと苦難の連続です。病気や貧困や戦争などで絶えず生命の危機に瀕するのです。何故これほどまでに苦しまなければならないのでしょうか。生きることは死ぬことよりもずっと厳しく、つらいものです。だからこの世に生を享けた以上は、そうした数々の試練、苦難に立ち向かわなくてはなりません。

 

 

「生き続けたい」という願い

 

 

 今、生きていることがそもそも奇跡なのです。もしも生まれた時代に戦争や内戦があったら、圧倒的な暴力により殺されていたかもしれません。戦争では、殺すことも殺されることにも、理由などいりません。ただ、殺し、殺されていくだけです。私たちは、たまたま戦争や内戦のない国や地域に生まれ育ったから、理不尽な目に遭わずにすんでいるだけのことです。人類が死に絶えないのは、そうした過酷な現実世界にあっても、そこから必死にもがき苦しみながらも生きよう、生き続けようとするからです。ああ、もうこんな苦しいのはごめんだ、さっさと死んでしまおうと思えば、そこであっけなく、終わってしまう。それはある意味、”簡単”なことかもしれません。

 

 

 でも私たちは生き続けたいと思う。たとえどんなに苦しくても、そうした困難を乗り越えていきたいと思う。ヒトよりも進化の過程で知能や生存能力が弱い生物はたくさんいます。たとえば、魚類。海には様々な種類の魚類が膨大な生物が生息しています。彼らは文字通り弱肉強食が支配する世界で、日々、生存競争に勝ち抜かなければなりません。そして次の世代に命を繋げるためにあらゆる努力も惜しみません。ヒトはせいぜい子供をつくるにしても10人強ほどが限度ですが、魚類は数千、数万の卵や稚魚を生み出して、その中から成魚になるまで生き残れるのは、ごく僅かです。生きられていられること自体が、奇跡なのです。

 

 

 強風では花見も楽しめやしない。東京オリンピックはどうやら延期の公算が高い。残念なことですが、仕方がありません。新型肺炎の感染拡大を食い止めること、この未知の病原菌に対抗できるワクチンを一日でも早く見つけ出すこと。こちらの方がはるかに大切です。そんなことはわかり切っています。

 

 

 きっと短い人生の中で、大切な思い出のひと駒となるはずの東京オリンピックが開催できなくなるのは、とても悲しいことです。花見にしても、毎年、ソメイヨシノは花を綻ばせてくれるには違いありませんが、一年のたった10日ほどです。人生よりもさらに短い花の命を愛でようというのです。それくらの楽しみはあってもいいではありませんか。

 せっかくの連休。そして桜の満開。この時くらいは南風も少しは遠慮してくれても良いのに、ままならないものですね。