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「抗体率」東京0.1%という「数字のマジック」の裏にあるものは?

 新型コロナウイルスへの感染歴を調べる抗体検査を行った結果、東京都での陽性率(保有率)が0.10%だったと厚生労働省が発表しました。その他の地域では、大阪府が0.17%、宮城県は0.03%とのこと。厚生省ではこの検査結果をさらに精査するとしながらも、「大半の人に抗体がないことが判った」との見解を明らかにしました。

 


 今回のデータは厚生省が正式に発表した数字ですから、信憑性は高いはずですが、実は以前にも別の研究機関が検査した時の数字とは大きな開きがあるのです。

 

 

「データ」に差が

 


 東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授らのチームが5月1、2の二日間にわたり、無作為に都内の一般医療機関新型コロナウイルスの抗体検査を実施した結果によると、10~90代の500検体のうち3例が陽性(0.6%)との数値があります。

 


 また、加藤勝信厚生労働相も、4月に都内と東北6県で採血された献血の中から無作為に抽出した各500検体のうち東京で3件(0.6%)、東北で2件(0.4%)の陽性反応が出たと発表したことがあります。検体数の違いはあるものの、きちんとした検査機関(厚労省の指定した期間も含む)が出したデータですから、正確な数字には違いありません。それにしても、このデータの数値の違いは一体、どうしたことでしょうか。

 

 

 最新データの数字だけ見れば、確かに日本人の大半が新型ウィルスに対する抗体を持たないことになります。因みに、抗体とは一度罹ると同じウイルスが再び侵入した際に体を守る特殊なタンパク質が体内で作られ、このたんぱく質のことを抗体といいます。つまり、抗体のある人は一度、新型ウィルスに感染した後に発症せずにそのまま治癒したということです。新型ウイルスでは、感染者の約8割が軽症か無症状のため、感染の有無を見極めることが難しいのです。そのため、感染の第二波、第三波への備えの観点からも、抗体検査を広く実施して、国民の感染実態を把握することが重要なのです。

 

 

 東京大学先端科学技術研究センターのデータでは、陽性率は0.6%ですから、東京都の人口1398万人の0.6%に相当する約8万人が感染しているということになります。厚労省の最新の検査結果では、0.1%で実に6倍もの開きがあります。検査数の多い方がより正確なデータを得られますから、感染者が多い東京・大阪と、少ない宮城で検査を実施し、今月1~7日、東京1971人、大阪2970人、宮城3009人の計7950人を対象に検査したという今回のデータがより精度の高い数値だといえます。

 

 

 諸外国でも新型コロナウィルスの抗体検査を実施している国は多く、たとえば感染者が爆発的に増加した米国・ニューヨーク州の陽性率は13.9%、ニューヨーク市は21%という非常に高い数値と日本の数値とは比較にならないほどの差があります。アウトブレークの起きたニューヨーク市ではロックアウトの措置が取られたのは周知の通りです。日本で最も感染者数の多い東京都では、都のみならず全国規模で緊急事態宣言が発令されましたが、それでもロックアウトはしませんでした。それは、この抗体率(陽性率)の違いによるものだったのかもしれません。

 

 

「数字のマジック」

 

 

 数字のマジックとはよく言ったもので、確かに具体的な数値で示されると大半の方は無条件で信用することでしょう。でも、「マジック」という表現が使われるのは、たとえその数字が正確であっても、やや信憑性に欠ける数字でも、数字の前には皆、ひれ伏さざるを得なくなります。これが数字のマジックその一です。当然、国民なり消費者なりの関心を引くために、都合の良いデータを出してくる場合もあるのです。

 

 

 昔よく言われていたのは、不動産の広告にある駅から徒歩10分とか15分という数字です。実際に駅から歩いてみたら、ベテランジョガーでもない限り、時間内に物件に到着することなど不可能だったなどという話をよく聞いたものです。徒歩といっても、限りなく駆け足に近い歩き方と普通に歩くのでは、所要時間に大きな違いがあります。当然、業者にしてみれば、所要時間を少なく見積もった方が有利に決まっています。勢い、都合の良いデータを広告に記載するはずです。もちろん、今ではそんなイカサマは許されませんが…。

 

 

 数字のマジックその2。データなり数字を発表するタイミングです。ニューヨーク市のように爆発的に感染者数が増えていき、医療崩壊を引き起こした当地では、これ以上、新たな感染者が出せないという深刻な状況にありました。5人に1人の割合で陽性反応が出たという数値は、市民に非常なるショックを与えたことでしょう。そして、感染予防に対してさらに真剣に取り組む決意を新たにしたに違いありません。

 

 

 では、今回の東京都の0.1%という低い陽性率が発表された16日というタイミングはどうでしょうか。19日にはついに全面解除に踏み切る旨を政府は繰り返し発言してきました。19日に自粛要請を全面解除することは既定路線です。一日に数百人規模の新たな感染者が発生するなどの非常事態とならない限りは、全面解除の取り消しあるいは延期はないでしょう。

 

 

 全国に緊急事態宣言を発出したことで、日本経済は今、100年に一度という危機的状況に直面しています。今後は経済の再生を第一にした政策を取らざるを得ないのです。そのためには、まずこれまで営業自粛を要請してきた業種に対しても、その他すべての業種に対して、自粛の完全解除が何よりもj重要です。

 

 

 安倍総理が胸を張って、感染者数が諸外国に比べて低く抑えられた現状について、「日本モデル」が世界的に高い評価を得ていると”自画自賛”しました。自粛が完全に解除された後もこの「日本モデル」を維持していくためには、「新しい生活様式」を提案しただけではまだ十分とは言えません。そこで、陽性率が0.1%というデータを今、公表して、ほとんどの日本人は抗体を持っていなのですから、これからも十分に用心してくださいね、というメッセージを込めたのではないでしょうか。

 

 

 むろん、厚労省が公表したからには、このデータは十分に信頼するに足るものですが、0.1%という数字に隠された「数字のマジック」があることも忘れませぬように。

 

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