明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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尾身会長の「変節」に惑わされてはいけません!

 ついに新規感染者数が全国で5万人を超え、留まるところを知らないオミクロン株。東京都の感染者数も22日現在で1万1227人ととうとう1万人の大台を超えました。東京都を含む1都12県に蔓延防止等重点措置が適応され、さらに対象地区の追加要請が続出しています。

 ”コロナ優等生”だった日本はオミクロン株が世界を席巻しつつある中、前政権の失敗から学んだのでしょうか、岸田内閣は早い段階で水際対策の徹底を指示するなど、この恐るべき変異株の侵入防止に努めましたが、日本だけがパンデミックの嵐に巻き込まれないことなどあり得なかったのです。

 

 

 「小池劇場」の再演を阻止しようとしたのかどうかわかりませんが、岸田総理は迅速に「まんぼう」の適応を決定しました。ところが、オミクロン株の方が政府の想定をはるかに超えるスピードで全国に感染を拡大させていったのです。皮肉なことに、東京都に「まんぼう」が適応されたまさにその日には、すでにデルタ株中心の「第5波」とは比較にならぬほど爆発的なオミクロン株の感染状況を呈していました。もはや「まんぼう」どころか「緊急事態宣言」の発出も時間の問題です。

 

 

「尾身発言」の波紋

 

 

 こうした危機的な状況下、ある「発言」が波紋を呼んでいます。あろうことか、これまで「3密」や「新しい生活様式」の提言などを行ってきた政府分科会会長の尾身茂氏が19日、会見でこんなことを言い出したのです。

「オミクロン株の特徴にふさわしいめりはりのついた対策を打つ必要がある。人流抑制ではなく人数制限がキーワードだ」とし、さらに「ステイホームは必要ない。渋谷駅前の交差点がいくら混んでいてもほとんど感染しない」と語り、政府分科会のこれまでの方針から制限緩和に大きく舵を切ったかに思える発言を行ったのです。

 

 

 確かにコロナ禍に見舞われたこの2年間で国内の産業界は大きな打撃を被り、日本経済は疲弊しました。政府としては分科会の提言という形で何とか社会経済活動の正常化を図りたい意向に違いありません。ウィズコロナを模索する中にあって、尾身分科会会長のあの発言は政府の意向を”忖度”した結果だったのかもしれません。

 

 

 尾身会長の「制限緩和」寄りの発言は、しかし、政府が口には出せない本音に近い内容だったため、オミクロン株の超高速感染拡大の状況下では、およそそぐわぬものでした。これまで分科会で了承された基本的対処方針とも食い違いが生じました。分科会の提案では、混雑した場所などへの外出自粛、検査で陰性と確認されたグループには5人以上の会食を認めるなどが明記されていました。

 

 

 「まんぼう」対象地域に当たる東京都の小池知事はさっそく尾身発言と政府の方針の食い違いについて噛みつきました。これまでさんざん「3密」にならないように「忘年会・新年会」は無論のこと、普通の飲み会ですら我慢してきたのに、手のひらを返したような方針転換には納得がいきません。

 ましてやオミクロン株の猛烈な感染拡大がつづく最中です。早ければこの1週間以内には特に感染の急拡大が著しい東京都は「緊急事態宣言」の発出を要請する可能性が高い。尾身氏は言下にオミクロン株発症者はデルタ株に較べ重症化しにくいことを強調したかったのかもしれませんが、いくら重症化率が低くても感染者数がさらに急増すれば中重症者数も比例して増加することは間違いありません。そうなれば、再び医療機関が病床の逼迫など危機的状況に陥ることは容易に想像できます。

 

 

 尾身会長が分科会会長としてこれまで国民に対して新型コロナに対する危機感を訴え続けてきたことを考え合せると、やはり”変節”したとしか思えません。この尾身発言の真意は問われるべきです。

 オミクロン株の強力さを知り尽くしている専門家である尾身会長だからこそ、その発言は重い。もしも今、オミクロン株の年代別の感染者数の割合が最も高い20代の方々が「ステイホーム」を辞めて渋谷のスクランブル交差点に代表されるような人々の密集する繁華街に大手を振って繰り出したら、一体、どうするおつもりでしょうか。

 

 

「変節」に惑わされるな

 

 

 さすがに尾身氏は自らの行った「発言」内容をその後に誤解を招いたとして訂正しましたが、時すでに遅し。一度、口から出た発言はそう簡単には取り消せません。今、若い方々は最も権威のある専門家である尾身会長のこの発言を免罪符にして、ステイホームなんてもうやめた!ぱぁーっと街に繰り出そう!という気持ちを抑えることが出来ません。ただでさえ「コロナ慣れ」してきた今日この頃。重症化しないからオミクロン株なんて怖くない! そんな声が街中のあちこちから聞こえてきそうです。

 

 

 BCP(事業継続計画)を産業界は真剣に検討し始めています。事実、医療機関交通機関など公的な事業については、オミクロン株に感染した人員の穴埋めをどうするかなど、その対策を早急に講じなくてはいけません。重症化しなくても陽性者は一定期間隔離しなくてはならず、その間に人員不足となり事業の継続に大きな支障が生じる可能性があるからです。その意味では、第5波のデルタ株よりも数倍の感染力のあるオミクロン株はより危険なウィルスであると言っても過言ではありません。

 

 

 尾身分科会会長の「発言」は後に自身で訂正したものの、その波紋はますます広がるばかり。会長の”不用意”発言としか言いようがありませんが、ゆめゆめオミクロン株からの防御の手を緩めませぬように。尾身会長の「変節」に惑わされてはいけません。