明日を元気に生きるための「心の処方箋」

頑張り過ぎて疲れたあなた、心を痛めたあなたへ。言葉の癒しを実感して下さい

ラグビー日本大勝利を素直に喜べない「うつ」の辛さ

 ラグビー日本の大勝利に街中が興奮で湧きかえる中、うつの方は一体、どのような気持ちでいらっしゃるのでしょうか。老若男女が肩を抱き合って歓喜に打ち震える一方で、どうしてもそんな浮かれた気持ちになれないのではありませんか。そんな自分に何か後ろめたさを感じていませんか。

 

 

 皆はあんなに浮き立っているのに、自分だけ気持ちが沈みこんだままでいるのは、間違っているのではないかと今、自問自答していませんか。

 

 

 あなただけではないはずです。人知れず、落ち込んだ気持ちをひっそりと抱えて、苦しい思いをしているのは、決してあなただけではありません。かつてうつ病で苦しんだ経験があるから、私にはその気持ちがわかるのです。

 

 

 周囲の人々が大喜びして盛り上がる姿を見ること自体、苦しいものです。うつ状態にある方は何に対しても喜びや楽しみといった陽気な感情になれないからです。それがうつの症状なのです。

 

 

 歴史的勝利とか大番狂わせなどの大きな見出しが新聞の紙面に踊るのを見るのは、この際、やめておきましょう。周囲が少しずつ平静さを取り戻した頃に、ひとつのニュースとして受け止めるので十分です。

 

 

 みんなが大騒ぎしているから、自分もそうしなければいけないということはないのです。そうしたくてもできないから、苦しいのです。周囲の皆さんは、どうかうつの方の苦しい心情を察してあげてください。間違っても、いっしょに飛び上がったりさせないでくださいね。今は、そっとしてあげてくださいね。

 

 

 うつ状態の時には、周囲の環境に対してとても神経質になります。周囲の人々の反応に対して、自分はどう反応すればよいのか、思い悩んでいるのです。人込みの多い駅や盛り場などを避けたくなるのは、そのせいです。

 

 

 私がうつ病で休職していた時に、少しずつ人込みになれるようにと、図書館通いを精神科の先生から勧められました。図書館は静かな環境ですが、大勢の利用者がいます。そうした中に自分をおくことで、しだいに大勢の人がいる場所に慣れていくためのトレーニング方法です。図書館トレーニングといいます。日々、図書館トレーニングをするうちに人込みにひるむようなことはなくなりました。私にとっては、とてもよいリハビリになったと思います。

 

 

 どんなに皆がラグビー日本の大勝利を喜んでいようと、あなたはあなたの気持ちのままでいいのです。無理に一緒になって浮かれようなどと考える必要はありません。うつの症状が緩和されていけば、自然と楽しい気持ちも起こってくるものです。それまでは、多少の時間がかかるだけのことです。

 

 

 もし今回の歴史的勝利のニュースを見ても、ひとりだけ寂しそうにしている方がいたら、もしかしたらその方はうつ状態なのかもしれません。友人にそのような方がいたら、専門医に診てもらうのがベストです。

 

 

 いくら友人でもなかなか精神科に行った方がいいよなどと軽々しくアドバイスできるものではありません。そこが難しいところです。もし悩みを聞いてあげることが出来たらよいのですが。私もそうでしたけれど、自分が心を病んでいることを認めたくはないものです。

 

 

 ラグビー日本の大勝利を喜ぶどころか、逆に気持ちが落ち込むようなことがあれば、それはうつの可能性があります。あなたが普通の状態ではないことは、もう周囲の方も薄々気付いていることでしょう。でもよほど親しい友人や家族の方でもない限り、専門医に診断してもらいなさいとは言い出しにくいものです。

 

 

 あなたがどのような精神状態なのかを理解するには、今が良い時期だと思います。素直に皆と一緒に日本の大勝利を喜べましたか。それとも逆に気持ちが沈みましたか。もうひとりで悩むのはやめましょう。心療内科に予約を入れて、さっそくお医者さんに診てもらいましょう。

 

 

 奇しくも、今回、日本が大番狂わせの大勝利を挙げたことは、うつの方にとっては自分の精神状態を認識する良い機会にもなったのです。

 

 

 専門医の治療を受けて、うつからの脱出に成功すれば、今度はあなた自身の大勝利となるはずです。応援しています。