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うつの方は必見!『孤独のグルメ』松重豊の食べっぷりに癒される

 深夜番組にもかかわらず根強い人気を誇る『孤独のグルメ』。ほぼ毎年制作され今回はシーズン8を数えるとは、なかなかの長寿番組でもあります。ドラマとしてはストーリーそっちのけにして、ひたすら主役を演じる松重豊が、街中にあるごく普通のレストランや食堂で昼飯を食べまくるだけの内容。一人でひたすら食べることに集中するあの松重の食べっぷりを見ていると、何だか癒されるような気がしませんか。

 

 

お一人様ご飯を楽しむ

 

 

 グルメ番組は数多くあれど、『孤独の』のようなただ食べまくるシーンばかりを映し出すドラマはいままでなかったと思います。いつも一人でふらりと飛び込みで入ったレストランで、メニュー選びに散々迷った挙句、一人分にしては多すぎるほどの品数の料理を片っ端から平らげるのです。あの見事な食べっぷりにはいつも感心させられます。

 

 

 普通のグルメ番組ならば、レポーターが”海の宝石箱や”とか何とか感想をいうものですが、松重は一言を発しないままただただ口に頬張る。でも彼の心の声が独白的なナレーションとして流れます。食事中の松重は無口ですが、心の中でも実に饒舌にその料理がいかなる素晴らしい味なのかを語る、という演出は面白いですね。

 

 

 松重が目の前の料理について、口には出さずに心の中で称賛するのは、お一人様の食事だからでしょう。もっとも、お一人様の時にいちいち”出汁が効いていて実に旨いなぁ”などと声に出したら。周囲から奇異の目で見られることでしょう。

 

 

 松重豊という俳優の孤高な存在感が実に役柄に見合っていますね。人気シリーズになった功績は、もちろん原作の魅力もありますが、それ以上に孤独が似合う男、松重の存在感とあの見事な食べっぷりにあると思います。

 

 

気恥ずかしい「お一人様歓迎」の文句

 

 

 私の場合がそうでしたが、うつの気分の時には誰かと連れ立って食事をすることに苦痛を感じました。あまりにも気分の落ち込みが激しい時には、食事を楽しむ余裕すらありませんでしたが、少し症状が緩和されると、美味しい料理を楽しめるようになりました。

 

 

 精神科の先生から勧められて、人前に出ることに慣れるための訓練として図書館トレーニングというのを行いました。毎日、朝の定時に起きて、会社に行く代わりに図書館に行き、そこでしばらくの時間を過ごすというものです。図書館へ通うためには、当然、電車に乗りますし、人通りの多いところを歩きます。それが人込みに慣れさせる良い訓練になり、やがて職場復帰へとつながっていったのです。

 

 

 図書館トレーニング自体は実に単純な行為ですから、私などはすぐに飽きてしまい、図書館を抜け出して、近くのカフェでコーヒーを飲んだりしました。そして昼時には、ラーメン好きの私は、あちこちのラーメン屋を食べ歩いたものです。

 

 

 もちろんいつもお一人様ランチですから、ここの炙りチャーシューは絶品だなぁなどと思いながらも、決して口に出しはしませんでした。その点は『孤独のグルメ』の松重と同じです。私もひたすら麺をすすり、チャーシューにかぶり付き、両手でどんぶりを抱え込みスープを飲み干して、ああ旨かった!と口には出さなくても心の中で感嘆したものです。

 

 

 ある博多ラーメンの有名チェーン店で、替え玉までしすっかり満腹して、いざ会計しようとした時のことです。アルバイトらしき店員に”美味しかったよ”と一言言ったところ、店内に響き渡るような大音声で”美味しい、いただきました!”とやられて気恥ずかしい思いをしたことがあります。その店では店員にそういう教育をしているのでしょうが、私の発したひとことの感想を他の客に聞かせる宣伝文句に利用しようというのは、如何なものかと思いました。ましてや私は慎ましい”お一人様”なのですから、店内中から注目を浴びたくはありません。

 

 

 お一人様海外旅行とかお一人様歓迎のカラオケボックスやら、やたらとお一人様という文句が目につくようになりました。私個人の意見ですが、あまりお一人様と大っぴらにやられるのは、ちょっと気恥ずかしさを感じるのではありませんか。それとも今やお一人様客はどこからも大歓迎される傾向があるのでしょうか。

 

 

 もしもレストランや居酒屋でお一人様大歓迎などと書かれた看板が出ていたら、あなたはその店に入りたいと思いますか。店側が席数を考慮して一人客をどの席につかせようかと考えるのは勝手です。でも、だからといってことさらお一人様客だということを再認識させられるのは好きではありません。

 

 

食べっぷりに癒される

 

 

 うつ気分の時に、皆と連れ立って食事するのが辛いこともあります。そんな時に一人客をさりげなく迎え入れてくれるお店は有難いものです。もし『孤独のグルメ』で、松重演じる井之頭五郎がどの店に入ろうか思案しているところに、「お一人様大歓迎!」などと大書されたのぼりがはためいていたら、多分、彼はその店を選ばないでしょう。あくまでもさりげなく一人でも遠慮なく入れそうな店にするはず。もちろん、井之頭氏の胃袋が、その時に最も欲している料理を出してくれそうな店です。

 

 

 『孤独のグルメ』は、うつの方がやむなく一人ご飯をする時のどこか寂しい食事風景とは違い、明るく積極的にお一人様を楽しんでいるところに好感が持てます。松重のように、美味しそうな料理をあんなに豪快に片っ端から食べつくしたいと思いませんか。



喜劇王チェーリー・チャップリンが映画の中で最もこだわったのが、食事をするシーンでした。もしもチャップリンが松重の見事な食べっぷりをみたら、ひとことお褒めの言葉を頂戴できるかもしれませんね。ともあれ、あの松重の旺盛な食欲には、大いに癒しを感じさせてくれます。