明日を元気に生きるための「心の処方箋」

頑張り過ぎて疲れたあなた、心を痛めたあなたへ。言葉の癒しを実感して下さい

憂うつ気分を癒してくれる「雨に合う曲」を集めてみました

 台風シーズンがやっと終わったと思ったら、秋の長雨。雨降りの日は気温が上がらず、肌寒く感じます。寒々しいのは体だけではありません。心も何だか雨模様のような気がしませんか。

 雨降りは憂鬱気分を増幅します。とくにうつの方は注意が必要です。朝からしとしとと雨が降っていると、それだけで気分まで湿ってしまいます。

 

 

 雨の空模様の時には、なるべく心も体も無理をしないようにしましょう。急に張り切って運動したりするのは却って逆効果になることもあります。憂うつ気分の時にはなおさらです。そんな時には、カラ元気を出そうとせずに、むしろ気持ちが落ち着くようなしっとりとした音楽を聴くのがお勧めです。

 雨に合う曲を少し集めてみました。もちろん、私の好みですので、異論もあるでしょうけれども、ご参考になれば幸いです。

 

 

明るい曲より暗い曲を

 

 

 憂うつな気持ちの時には、真夏のビーチか何かで聴くような曲は避けた方がいいでしょう。底抜けに明るい曲調よりも少し暗い感じのする静かで落ち着いた音楽を聴くといいでしょう。

 

 

 よくシックなバーか何かでバックグラウンドのミュージックとして、ジャズが流れていたりします。静かなピアノトリオならムーディでいいだろうと思われる方もいらっしゃると思いますが、私個人としては、そもそもジャズはムーディなんかではなくて、グルーヴィーでご機嫌な音楽だと思っています。だから、音量を控えめのジャズが流れていても、好きな曲だったりする、つい前のめりになってしまう癖があります。ジャズのスウィングは文字通り、体が4ビートにリズムに合わせて自然に体が動いてしまうのです。

 

 

 ジャズファンで知られる村上春樹がジャズに関するエッセイ『意味がなければスウィングしない』で書いているように、良質のジャズは自然とスウィングするものなのです。

 

 

スローバラードでもスウィング

 

 

 スウィングすることが大前提で、雨に合う曲を選んでみました。たとえば、トロンボーン奏者のカーティス・フラーのリーダーアルバム『ブルースエット』の一曲目、『ファイブスポット・アフター・ダーク』。数々のジャズの名曲を生み出したテナーサックス奏者、ベニー・ゴルソンの曲です。メジャー・ブルーズが多い中で、この曲はめずらしくマイナー・ブルースです。ジャズの小粋なフィーリングを凝縮したような名曲。一度、聴いたらその曲のフレーズが頭から離れられなくなります。

 

 

 ピアニストのマル・ウォルドロン作の『レフト・アローン』もいい曲です。この曲が収録されたアルバムのタイトルナンバーでもあり、一曲目を飾るにふさわしい逸品です。ジャッキー・マクリーンがアルトサックスで参加していて、哀愁のフレーズ連発です。実はこの曲はビリー・ホリデイが作詞したといいますが、歌は入っていません。マル・ウォルドロンは日本で結構人気があるミュージシャンで、何度も来日しています。そしてこの『レフト・アローン』一発で勝負しています。雨の日曜日の昼過ぎに気怠い感じで聴くには最適の曲ですね。

 

 

 この曲はどうでしょう。『アイ・リメンバー・クリフォード』(クリフォードの思い出)。天才トランぺッターと呼ばれたクリフォード・ブラウンは自動車事故により25歳という若さでこの世を去りました。彼の死を悼んで前出のベニー・ゴルソンが作曲したのがこのバラードです。切々とした悲しみの溢れるようなメロディラインが泣けます。

 

 

 いろいろなミュージシャンの演奏がありますが、あえてバド・パウエルの演奏を選びました。ヨーロッパに渡ったパウエルがストックホルムにあるジャズクラブ「ゴールデン・サークル」でライブを行った際の録音です。晩年のパウエルの演奏はさすがに薬物中毒の後遺症なのか、とにかく調子が出ない演奏が多いのですが、この曲もまるでソロピアノのような感じで一人の世界に入り込んで、どこまでも暗く弾きます。弾いているうちにテンポがどんどん遅くなっていき、聴いているこちらが心配になるほどです。

 でもうつの方ならこの演奏が何となく分かるのではないでしょうか。うつ的な演奏なのです。でも気持ちが曲の中に入り込んでいく感じがして、なかなか聞かせます。

 

 

ロック魂も雨に合う

 

 

 ロック・ポップスの中でも探してみました。レオン・ラッセル作の『ア・ソング・フォー・ユー』。ピアノの弾き語りで歌われる曲ですが、独特のしわがれ声でため息のような歌い方は一度聴いたら虜になること請け合いです。カーペンターズも彼らのアルバムのタイトルにしています。心に染み入るような何とも言えない名曲ですね。

 

 

 ザ・ドアーズのセカンドアルバム『まぼろしの世界』に収録されているタイトル曲。カリスマヴォカリスト、ジム・モリソンの暗く屈折した感じの歌声が印象に残ります。ドアーズといえば、一番有名な曲はファーストアルバムに入っている『ハートに火をつけて』でしょう。このアルバムのB面最後『ジ・エンド』は、映画『地獄の黙示録』で使用された曲です。10分近くの長尺でこちらもとにかく暗くて最高です。

 以前、どこかのスナックで『まぼろしの世界』がカラオケに入っているのを見つけて驚きました。こんな曲を歌う人がいるのかと思ったものですが、私はもちろん歌いましたよ。場は多少白けたようでしたけれど。ついでに『ジ・エンド』も歌っちゃいました。

 

 

 屈折した曲ばかりなので、もう少し陽性の曲も。ニール・ヤングの『ライク・ア・ハリケーン』はどうでしょうか。ニール・ヤングアメリカンロックの雄ともいうべき偉大なミュージシャンです。この曲をライブで演奏するMTVがありますが、これがスゴイ。甲高い独特の歌声でとつとつと歌いだして、次第に乗ってくると、さあギターソロです。フレーズがどうのということではなく、ロック魂に直に触れたような感じがします。格好いい曲なので、聴いてみてください。

 

 

マーラーは分裂症気味か?

 

 

 クラシックも選んでみました。ショパンの練習曲第3番ホ長調『別れの曲』です。有名曲なのでいろいろなピアニストが演奏していますが、私はやはり敬愛するリヒテルの演奏を選びたいと思います。旧ソ連時代にあってリヒテルがまだ西側諸国で公演したことのない1950年代、ブルガリアのソフィアで行ったライブ録音です。このアルバムは一曲目の『展覧会の絵』が有名ですが、他の曲もすごい。でも録音が古いので、観客が咳き込む音などがもろに聞こえて、風邪をひいたら家で休んでいろと思わず突っ込みたくなります。

 

 

 マーラー交響曲第7番ホ短調『夜の歌』もいいですね。第一楽章からして暗く、沈んだ音色で夜の世界が目に浮かぶようです。でもなぜか最終楽章はそれまでの静けさはどこへやら、やたらと勇ましい真昼間の雰囲気で、マーラーは分裂症なのかもしれないと思ったりします。あまり演奏する機会の少ない楽曲ですが、個人的には好みです。やっぱりうつだからでしょうかね。レナード・バーンスタイン指揮のニューヨーク・フィルハーモニックの演奏をお勧めします。

 

 

 最後にもう一曲ご紹介したいのは、シューベルト交響曲第8番ロ短調『未完成』です。有名な曲なので、いろいろな演奏があります。ここでは、カール・ベーム指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を選びました。ムラヴィンスキー指揮のレニングラードフィルもスゴイ演奏ですが、あまり一般的ではないかもしれません。でもベーム指揮のこれは正統派と呼ぶにふさわしい演奏です。屈指の名演といえるかもしれません。

 

 

 雨に合う音楽ということでいろいろなジャンルから選んでみました。どの曲も有名ですから、ご紹介したCDは比較的入手しやすいものばかりです。よろしければ、聴いてみてください。