明日を元気に生きるための「心の処方箋」

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「羽毛布団」「ダウンジャケット」大流行でアヒルは絶滅しませんか?

 師走と言わず、晩冬という呼び名で呼ぶことにしました。12月に突入して、さっそく北陸や東北地方では大雪の予報が出ました。幸いなことに、都心では時折雨脚が強まることもありましたが、さほどの大雨にはならずに済みました。「晩冬」の始まりとしては、まずまずの出来ではないでしょうか。北風が吹いて空気がカラカラに乾燥する日がしだいに増えてきますが、今日の雨はほどほどのお湿りと言えなくもありません。

 

 

着ぶくれは時代遅れ

 

 

 いよいよ冬将軍の出番が近くなりました。放射冷却により晴れた日の方が、気温が低下します。そんな真冬の日常を快適に過ごすには、まずは正しい服装選びが第一です。とはいえ、いくら完全防寒しようとして、ネルのシャツに厚手のセーター、さらに分厚くて重たいコート姿では、あまりファッショナブルとはいえませんね。寒い冬にこそ、ファッションを楽しみたいという方々は上級者といえそうです。そういう方の服装を拝見しますと、必ずしも厚着というのでもなさそうです。それなのに、やせ我慢ではなく、涼しい顔をしています。いや、正確には、暖かそうな表情をされていることに気付きます。

 

 

 我々昭和世代は冬には厚着をするのが常識でした。でも今や厚着は完全に時代遅れのようです。むろん、最低気温が氷点下何十度という極寒の世界で過ごされる方は、本格的な防寒対策は欠かせません。最低気温がマイナスまで下がることの少ない都心では、町行く人々は昭和世代の常識とは正反対に、まるで秋口の頃のような薄着で過ごすことが多いのです。そのわけは、ユニクロが中心に流行らせた「ヒートテック」に代表されるような新種の防寒着の登場にあります。

 

 

 ヒートテックのような発汗作用を熱に変える新素材で出来た肌着を着ていれば、寒さはかなり防げます。むろん、肌着一枚ではだめですが、その上にシャツを着て、さらにダウンジャケットを羽織れば、真冬でも寒い思いをすることはありません。冬の必須アイテムといえば、ダウンジャケットでしょう。

 

 

 私が学生の頃には、まだダウンジャケットは高価なものでした。バイトで貯めたお金をはたいても買って自慢げに着たものです。当時のダウンは、まるでミシュランのタイヤを幾重にも重ねたようなもので、ぶかぶかと着ぶくれしました。縫い目と縫い目の間のダウンがぶくぶくと膨らみ、まるでタイヤのお化けのような感じです。今の若い人が当時流行ったダウンジャケットを見たら、きっと大笑いされるでしょうね。

 

 

 そしてこのぶかぶかに膨れ上がったダウンを着て、満員電車に乗る時には、周囲からは傍迷惑に映ったことでしょうね。私も自慢げにダウンを着て肥大した図体を無理やり満員の車内に押し込めたものですから、申し訳ないことをしました。お詫びしなくてはいけませんね。

 

 

ダウンの大流行で

 

 

 今やそんな時代遅れのダウンを着ている人など一人もいません。初冬の頃には、ダウンが少なめの「ライトダウン」やら「ウルトラライトダウン」やらを着れば十分に保温効果があります。昭和時代のダウンの流行よりも今の方がずっとダウンは普及するようになりました。一言でいうならば、猫も杓子もダウンを着ている感じです。今や老若男女を問わず、皆、ダウンの一枚や二枚は持っていて当たり前になりました。実際、駅や繁華街で道行く人々をご覧になればわかります。あのお年寄りもユニクロのダウン、あの学生さんもユニクロ、あの人はワークマンかしら、という感じです。

 

 

 ダウンジャケットを着ることは、今や秋冬の常識ですらあるようです。要するに、猫も杓子も、老若男女を問わず、ダウンを着ているわけです。ひと昔まえのぶくぶくに膨れ上がるものではなく、適度な厚みをもつダウンです。ダウンは保温性に優れている上に、軽くて着やすいのも魅力です。着ぶくれしない「厚着」というは、やはりダウンあってのことなのかもしれません。

 

 

 でもちょっと待ってください。そんなに皆が皆、ダウンばかりを着るようになったら、その羽毛を提供してくれるアヒル君たちの運命はどうなってしまうのでしょうか。魚好きの日本人が海洋資源を大切にして、どこかの国の漁船のように、やみくもに魚を捕獲したりすることのないように、規制を設けています。同様のことがダウンの羽毛の持ち主たるアヒルにもいえます。こんなにダウンジャケットばかり皆が着るようになったら、そのうちアヒルは乱獲のために(飼育されていますが)、絶滅してしまうのではないかと心配になります。

 

 

 ジャケットやコートだけではありません。羽毛布団や掛け布団、羽毛の枕などの寝具もダウンが大流行りしています。テレビショッピングで、当商品は上質なダウンのみを使用しています、などと盛んに宣伝していますが、そんなに希少なダウンばかりを使った寝具が増えたら、やはりアヒルがいなくなりやしないでしょうか。アヒルも大切な資源です。大切に保護する必要があります。

 

 

人工羽毛を使用

 

 

 そのように考える人は少なくないようです。というのも、たとえば米国の有名ブランド、ブルックスブラザーズのダウンには、わざと天然のものではなく人工のダウンを使用した商品があります。それでいて、意外と値段がお高いのが玉にきずですが、まあブランド品だから仕方がありませんね。

 

 

 実は、私も以前から(昭和の時代から)ダウンジャケットの愛用者で、ユニクロのダウンをここ十数年間着続けています。で、たまには、ちょっと違うブランドのダウンコートを着てみようと思い、ブルックスブラザーズのダウンコートを購入したのです。

 

 

店内のダウンコートを見ていると、店員さんが近づいてきて、まず開口一番、

「当店のダウンは天然素材ではなく、資源の保護のためにわざと人工ダウンを使用しています」

 とおっしゃるので、こちらが驚いてしまいました。普通、人工ダウンです、などというのはセールストークには向かないのではないか、と思ったのです。でも、確かにその通りだと気を取り直して、納得した上で人工ダウンのコートを購入することにしました。

 

 

 人工羽毛とはいえ、軽さや保温性、着心地にはまったく問題はありません。快適そのものです。ちょっとユニクロよりもお値段は張りますが、それ以外では大いに満足しています。面白いと思いませんか。だってわざわざ人工ダウンを”売り”にするなんて、逆転の発想がなかなか斬新です。人工ダウンのコートを、天然のダウンよりも高額で買うというのは如何なものか、とも思いました。でも確かに店員さんに言われるまでもなく、皆が皆、高品質のダウンだけを使用した寝具やダウンジャケットを買っていたら、本当に羽毛の提供者たるアヒルが絶滅してしまうかもしれません。

 

 

 人工ダウンのコートを羽織るたびに、地球の資源について考えるなんていうのは、柄でもないのですが、ちょっと考えさせられました。皆さんはどのようにお考えでしょうか。